最近よく目にする「AGA」の3文字。悪玉男性ホルモンが引き起こす男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia=AGA)のことだ。この物語の主人公、薄井秀夫も薄毛に悩むアラサー男子。そんな薄井の前に気になる女性が現れた。よし、彼女のためにも、きちんと薄毛の悩みを解消しよう。友人のアドバイスをうけて、薄井はAGA治療をはじめることを決意した。
※この物語はフィクションです。
病院選びのポイントは、蓄積した治療ノウハウの量
「うーん」
自宅のダイニングテーブルに置いたパソコンの前で、薄井はさっきから腕組みしたままだ。
パソコンのモニターには銀クリ(銀座総合美容クリニック)のホームページが……。
予約をとるかどうするか、迷っているらしい。
数日前、薄井は友人の黒井を居酒屋に呼び出して、恋と薄毛の悩みを打ち明けた。
「ようやくデートの約束をとりつけたんだけど、髪の毛が気になって……。彼女に薄毛はキライとか言われないかな」
ビールのジョッキを片手に、黒井は豪快に笑い飛ばした。
「なんだ、そんなことか。ハゲは治療できるんだぜ。そんなに心配ならAGAの病院で診てもらえよ」
「あちこちで広告を見かけるから知ってるよ。でも、どこがいいのか見当つかないし……。やっぱり気軽だしオンラインの診療がいいのかな?」
「オレは経験者だから、はっきり言う。AGA治療はオンラインより対面診療だよ」
メニューを見ながら、黒井は自分の体験を語ってくれた。彼もまた長年薄毛に悩んできたのだった。
「オンラインだけの病院と対面診療をやっている病院とでは、“診療の質”が違うんだ。
AGA治療のノウハウというのは、患者の“ビフォー”と“アフター”をはじめ経過をきちんと診ることで蓄積されていく。
サブスクみたいに薬を定期的に郵送するだけのオンライン診療では、そのノウハウが貯まらないんだ」
どの治療薬が効きやすいのか効きにくいのか、またどんな服用の仕方や濃度が効果につながるかは一人ひとりの体質で変わってくる。
仮に効果が出たとしても、途中で反応がにぶってくることもある。その場合は服用の方法や治療法を変えなくてはならない。
「だからこそ、対面診療で治療のノウハウを蓄積している病院を選ぶことが大事なんだ」
黒井が勧めてくれたのが銀クリだった。彼自身、半年前から治療を受けているという。
「銀クリには、いままでに185万人のAGAを治療してきた実績があるんだ。それも対面で、だぜ」
皿の上で焼き鳥を串から外している黒井の頭頂部を見ると、たしかに前より髪の毛が増えた印象だ。
「銀クリね。よし、僕も一度診てもらおう」
二人は祝杯をあげた。
とはいったものの、いざ予約をしようと思うと、決心が鈍ってしまう。結局、パソコンを前に薄井はフリーズしてしまったわけだ。
「どうしたもんかなぁ。せっかくの休みに、わざわざ都心まで出かけていくのもめんどくさいしなぁ」
あの居酒屋での決意はどこにいってしまった、薄井秀夫!
そこへ、LINEのメッセージが届いた。気になる女性、ひなチャンからだ。
――来週の湘南ドライブ、楽しみにしています💛
やった、即レスだ。
――ぼくもです☺お天気だといいですね
よし、決めた。 いきなり髪がふさふさ生えてくるわけじゃないだろうけど、このままくよくよ悩んでいたんじゃ、そのうち彼女に嫌われてしまう。
薄井はホームページの「新規来院予約」をクリックした。
いよいよ銀クリへ。薄井の緊張は高まる
銀座総合美容クリニックが入っているビルは、JR新橋駅の銀座口からすぐのところにあった。
事前予約制だけに、混みあった待合室で気づまりな時間を過ごすこともない。受付をすますと、問診票を渡される。
さっそく待合室で記入をはじめた。
――どの部分が気になりますか?
うーん、頭頂部かな。
――いつ頃から気になりましたか?
うーん、就職してからだから、4年くらい前かな。
――どういうときに気になりますか?
鏡見たときにやっぱり気になるよね。あとは、枕に抜け毛が目立つな。
生活習慣から健康状態まで、記入する項目は結構多い。問診票を記入していると、自分の髪の毛の状態をちゃんと把握していなかったことに気づく。ぼんやりとした不安で悩んでいたんだなぁ。薄井はあらためてそう思った。
いよいよカウンセリングだ。白衣姿のカウンセラーが問診票をもとに、症状を確認する。薄くなっているのは生え際だけかと思っていたが、いろいろ聞かれているうちに、頭頂部も薄くなっていることに気づいた。
「症状からすると、薄井さんは男性型脱毛症、AGAの可能性が高いですね、症状については医師にしっかり診てもらいましょう。カウンセリングに来られる方のなかには、症状からみてAGAではないという方もいるんです。なかなか自己判断が難しい症状の方も居るので、しっかり確認しないとですね」
カウンセリングではAGAの仕組みを説明してくれる。
男性ホルモンである「テストステロン」が皮脂腺から分泌される酵素の影響によって「ジヒドロテストステロン」というホルモンに変わる。これが“悪玉男性ホルモン”とよばれるもので、通常2年から6年かかる髪の生え代わりサイクルを短縮してしまう。それによって抜け毛の量が増え、本来は長く、太い髪に成長するはずの毛髪が、細く、短い状態で成長が止まってしまうのだ。
では、症状を改善するためにどんなアプローチがあるのか。
フィナステリドに代表される酵素の働きを阻害して薄毛の進行を抑える内服薬、ミノキシジルに代表される毛母細胞を刺激して発毛をうながす内服薬を組み合わせて処方するが、単に薬を処方するだけでなく、患者一人ひとりの治療計画にしたがって細かい調整が必要になってくる。
「お薬は30日分処方しますので、月に1度来院していただいて経過を確認します。当院では、半年をひとつのメドとしています。その時点で初診の写真と比較してあきらかに発毛の効果があるという点を最初のゴールとして治療を行うのです」
なるほど、半年か。それで薄毛の悩みが少しでも解消するならラッキー、と薄井は思う。なにしろ20代半ばから、長い間悩んできたのだから……。
「これでカウンセリングは終了です。もし治療をお受けになりたいということであれば、このまま医師による診察に移ります。もう一度考えたいので、今日はこれでお帰りになるということであれば、費用は発生しません。カウンセリングは無料です」
「もちろん、治療を希望します」
薄井は即答した。
専門の医師が毛髪の状態を細かくチェック
いよいよ診察だ。診察室に入るとちょっと緊張するが、白衣姿の先生はにこやかな表情でむかえてくれる。
「薄井さん、もう少し詳しく症状についてお聞かせ頂きますね」
毛髪の現状やこれまでの変化についてさらに細かく説明する。
「最近の健康診断の結果はお持ちですか? もしお持ちでなければ、こちらで血液検査をしますね。治療薬の処方のためには既往症のあり・なしや健康状態を確認しなければならないんです」
なるほど、AGA治療も普通の医療行為なんだ。
「ちょっと失礼して、頭皮を拝見します」と先生。頭頂部の髪の毛をかき分け、頭皮の状態を確認する。
普段じっくり観察される部分ではないから、なんだか恥ずかしい。
「マイクロスコープで見てみましょう」
モニターに拡大された頭皮が映し出される。確かに髪の密度が減っていて、細く、短い毛髪が目立つ。
これがAGAの症状か。
最初に行われる「問診」、毛量や密度をはじめ頭皮の状態を確認する「視診」、髪の硬さなど視覚で得られない状態を確認する「触診」、これが基本の「三診」だそうだ。この3つの手法で症状を見きわめ、治療方針を決定する。
オンライン診療ではここまではできない。黒井が対面診療を強く推した理由がわかった気がした。
最後に、現在の状態を様々な角度から写真に撮影して診察は終了。
「1ヶ月分のお薬をお渡しいたしますので一日1回きちんと薬を服用して、髪の毛の状態や変化をよく見ておいてくださいね」
お医者さんからのアドバイスを胸に、薄井は薬を受け取って帰路についた。