薬を飲み始めて２週間、思いがけない事態が……
翌週土曜日の湘南ドライブは、最高の一日となった。
海風を感じながら国道134号線を一路江の島へ。助手席に座るひなチャンとはK-POPの話で盛り上がった。
毎日きちんと薬を飲んでいるという安心感が自信につながったのか、彼女の前でもごく自然に振る舞うことができる。髪の毛を気にして、あんなにくよくよ悩んでいたのは何だったんだろう？ 薄井は海を眺めながら、不思議な気がした。
七里ガ浜で夜景を楽しんで、人気のイタリアンでディナー。この日のために練りに練った完璧なプランだ。
「薄井さん、とっても楽しかった。ありがとう。また遊びに行きましょうね」
ひなチャンを自宅まで送った帰り道、薄井はさっそく黒井に感謝のLINEを送った。
「銀クリを紹介してくれてありがとう。ひなチャンともうまくいきそうな予感。✌」
ところが、その数日後、ショッキングな事態が薄井を待ち受けていた。
朝起きてみたら、枕に大量の抜け毛が残っていたのだ。しかも、それが連日続いた。
――きちんと薬をのんでいるのに、いったいなんだ、これは？
あわてて診察の予約をとると、薄井は銀クリに駆け込んだ。
「落ち着いてください、薄井さん。初診のときに説明しましたが、これは“初期脱毛”という症状です。薬を飲みはじめて2週間くらいから、一定期間抜け毛が増えるんです。これは成長を開始した髪の毛が古い髪を押し出すことで発生するんですが、その後おさまりますので安心してください」
確かに、最初に説明をうけた。ところが、枕に残った抜け毛の本数にショックをうけて、記憶が飛んでしまったのだ。先生の説明に胸をなでおろす薄井。実は急に増えた抜け毛が気がかりで、ここ数日仕事が手に着かない状態だった。
「処方した薬に対する反応が良すぎたのかもしれませんね。初期脱毛を抑えるように、少し薬を変えてみましょう」
治療は長期にわたる。薬を使い続けると次第に効かなくなったり、長く服用することで身体に負担がかかることもある。そういう時は、効果を見ながら薬の量を調整する。これは知見を重ねた専門の医師でなければできないことだ。
――AGA治療では、対面診療で豊富な知見を蓄えている病院を選ぶことが大切。
黒井のこのアドバイスをあらためて思い返して、薄井は納得した。
治療開始から3ヶ月。ついに変化が現れた！
その後、抜け毛も気にならなくなり、いつものおだやかな日々が続いた。
最初はめんどくさいと思っていた月に1度の診察も、逆に待ち遠しくなってきた。初診のときに撮影した毛髪の写真と現状を比較しながら、変化を確認する。試験の結果を確かめるのと似たような気分だ。
一歩ずつあせらずに前へ。ひなチャンとの交際でも、薄井はそれをモットーにしている。はじめての湘南デートから3ヶ月、一歩ずつ距離感も近くなってきていると思ってる。
「おっ、変化が見えはじめましたね」
先生の声に、薄井はいきなり夢から現実に引き戻された。
銀クリで3ヶ月目の診察をうけているときだった。
「えっ、何がですか？」
「気がつきませんか、この生え際の部分……」
そういえば、こめかみのあたりがなんとなく黒くなってきたような気がしていた。
「薬の効果が出てくるのは、最低でも3ヶ月かかりますからね。ほら、初診のときの写真と比べてみてください。薄井さん、順調ですよ。患者さんによって、個人差がありますからね」
いつもにこやかな先生は、まるで自分のことのように喜んでくれる。それにつられて、自分でも自然とうれしさが込み上げてくる。まだまだ先は長いかもしれないけれど、がんばるぞ。
帰り道、うれしさのあまりひなチャンにLINEを送りたくなった。この喜びを彼女と分かち合いたい。
「おっと、カミングアウトはもう少し先だな」
薄井はふたりのこの先をぼんやりと想像していた。
※この物語はフィクションです。実在するいかなる個人とも関係ありません。
※AGA治療の効果効能には個人差があります。
INFORMATION
銀座総合美容クリニック
公式サイト：https://www.gincli.jp/
（東京院）東京都港区新橋1-9-5 KDX新橋駅前ビル 4～5階
（大阪院）大阪市北区曽根崎新地1-4-20 桜橋IMビル15階
※診療時間（完全予約制）
月・火・木・金・土 11:00～20:00
日・祝 11:00～19:00
休診日：水曜日
料金：初月1000円、2カ月目以降は、AGA治療内服薬2000円～1万9250円（※保険外の自由診療）
相談・予約は東京・大阪共通のフリーダイヤル（0120・972・335）か、公式サイトから
Illustrations by Great International
