救急医療体制を刷新し、より多くの患者さんを受け入れる

院長 桑鶴 良平
くわつる・りょうへい/1984年順天堂大学医学部卒。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校放射線科造影剤研究所留学。医学部放射線医学教室・放射線診断学講座主任教授、同大学医学部附属順天堂医院院長補佐、副院長などを経て、2024年より現職。


副院長 山路 健
やまじ・けん/1988年順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部膠原病内科学講座教授、同大学医学部附属順天堂医院院長補佐などを経て、2022年より現職。医療サービス支援センター・センター長を兼任。

 救急科を中心に各診療科が連携

桑鶴 当院は、入院や手術が必要な重症の患者さんにも対応できる「二次救急医療機関」に指定されています。救急科が中心となって24時間365日、救急外来に来院する患者さんと、救急車による搬送に対応する体制を整えています。

山路 当院における救急の役割は大きく2つあります。1つは、すでに当院にかかっている患者さんに対応すること。急を要する何らかの症状に見舞われたときはいつでも受診できる体制を整えてきました。そしてもう一つは、地域の救急患者さんに迅速に医療を提供すること。近年は高齢化などを背景に地域における救急医療のニーズが高まってきています。2023年度は救急全体で約2万件、うち7000件を超える救急搬送に対応しましたが、より多くの患者さんを受け入れることができるように救急体制の見直しを進め、24年度から新体制をスタートさせました。

桑鶴 救急の患者さんは、病気やけがの種類が多岐にわたっていて、重症度もごく軽いものから命にかかわる重いものまで幅が広い。すぐに原因がわからなかったり、複数の診療科にまたがったりするケースも少なくありません。以前は診療科ごとの当直で対応していたため、受け入れが可能かどうか、受け入れた患者さんはどの診療科が担当すべきかといった判断が非常に難しかったんですね。新体制では、受け入れの可否の判断と受け入れた患者さんの初期診療はすべて救急科が行うように、入り口を一本化しました。

山路 救急科の外来だけで治療が完結することも多いですが、救急科が「入院が必要」と判断した場合には全身管理を得意とする「総合診療科」に引き継ぎます。経過を観察し、より専門性の高い診療や手術を要する患者さんは、脳神経外科や心臓血管外科といった専門の診療科につなぎます。救急科から直接、各診療科に依頼することもあります。

救急受診でも最高の医療を

桑鶴 救急科を中心に総合診療科や各専門診療科が連携し、それぞれの得意分野を生かして役割分担をすることで、効率的に診療できるようになり、今までよりも多くの患者さんを受け入れられるようになりました。より早く、より適切な医療につながるので、患者さんのストレスも軽減しています。

山路 救急でも専門性の高い治療を提供したり、昼夜を問わず緊急の手術に対応できるのは大学病院ならではの強みであり、患者さんにとって大きなメリットと言えるでしょう。

桑鶴 私たちはすべての患者さんに対して公平に、安心・安全を心がけながら質の高い医療サービスを提供したいと考えています。この姿勢は、救急医療においても変わることはありません。より多くの方に満足していただけるように、救急医療をさらに充実させていきます。

【救急科】EMERGENCY DEPARTMENT
軽症から重症まで幅広く対応。各診療科と連携し、最適な治療を

救急科 教授
近藤 豊
こんどう・ゆたか/2006年 琉球大学医学部卒。同大学医学部附属病院救急部副部長、米国ハーバード大学(外科学)研究員などを経て2024年より現職。

 救急外来では、救急科の専属医が救急車で搬送される患者さんと自力で来院する患者さんに24時間体制で診療を行っています。病棟にHCU(ハイケアユニット:準集中治療室)も含めて救急科専用のベッドを27床用意し、入院にも対応しています。

 救急外来を受診する患者さんは、小さな切り傷や風邪のような比較的軽症のものから、心肺停止や多発外傷、敗血症、熱傷、熱中症、中毒、アナフィラキシーといった緊急性が高く、命にかかわる傷病までさまざまです。救急科には幅広い急性症状の診断・治療ができる救急専門医に加え、外科や整形外科、総合内科、循環器内科、脳神経内科、集中治療など各分野の専門医資格を持つ医師も所属。診療看護師や救急救命士などの経験豊富なサポートスタッフも常駐し、高いレベルの診療を展開しています。

救急外来で診療にあたる多職種チーム
救急外来で診療にあたる多職種チーム

 また、より専門的な治療が必要な場合、適切な診療科に引き継げることも大学病院ならではの強みです。当院には眼科や耳鼻咽喉科といったマイナー診療科も含めて30以上の臓器別の専門診療科があり、高度な医療を提供したり、緊急手術にも対応することができます。病状に応じて他の診療科につなぐのは、救急科の大切な役割です。他科と連携しながら、患者さん一人ひとりに適した治療をより早く提供するために日々力を尽くしています。

 救急医療は「緊急時のとりあえずの医療」「最低限の検査・治療しかできない」といったイメージを持たれがちですが、当院の救急は患者さんが昼夜を問わずいつでも質の高い診療を受けることができるように病院全体でしっかりと体制を整えています。お困りのことがあればいつでもご相談ください。

【総合診療科】DEPARTMENT OF GENERAL MEDICINE
入院が必要な患者さんを担当。多角的な視点で診療し、不安に寄り添う

総合診療科 教授
内藤 俊夫
ないとう・としお/1994年名古屋大学医学部卒。順天堂大学内科、米国留学などを経て2015年より現職。主な研究領域は 総合診療、ウィルス感染症学、HIVなど。

 大学病院では臓器ごとの診療科で専門的な医療を展開していますが、私たち総合診療科は臓器の枠にとらわれずさまざまな角度から診断や治療をすることを得意としています。また診療はもちろんのこと、安全対策や退院支援なども含めて総合的に管理する「ホスピタリスト(病院総合医)」であり、患者さんの身近な相談相手でもあります。総合診療科はこうした強みを生かし、救急で「入院が必要」と診断された患者さんの診療や管理を担当しています。

 救急外来の初期診療では専門の診療科が対応したほうがいい場合は速やかに各科に引き継いでいますが、原因がはっきりしなかったり、複数の臓器が影響しているケースも少なくありません。高齢でいくつも持病があるなど病態が複雑化し、全身管理が必要な患者さんもたくさんいます。そこで総合診療科のホスピタリスト・チームが入院した患者さんの担当医となり、総合的な視点で検査や治療をしたり、感染対策をしたり、必要に応じて専門の診療科の医師につなぐなどのマネジメントを行っています。救急の入院は病状が急変しやすく、最初の見立てとは違う病気が見つかるなど、いろいろな問題が起こり得ます。的確な診断や全身管理をするためのトレーニングを受けている総合診療科医がかかわることで、患者さんにより安全で質の高い医療を提供できると考えています。

研修医教育の一環で、症例カンファレンスを行う病棟チーム
研修医教育の一環で、症例カンファレンスを行う病棟チーム

 救急で入院するのは不安になるものです。総合診療科はその不安を少しでも軽減できるよう、患者さんに寄り添うことを強みとしています。さらに総合診療科の外来では、退院したあとの健康不安など、幅広く相談に応じています。救急で当科にかかったのを機に、健康管理のパートナーとしてぜひ活用してください。

INFORMATION

順天堂大学医学部附属 順天堂医院
〒113-8431  東京都文京区本郷3-1-3
TEL.03-3813-3111(大代表)
https://hosp.juntendo.ac.jp/

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