「厚生省早期関節リウマチ診断基準(山前)」の策定に尽力した山前邦臣前院長によって1977年に設立された「新横浜山前クリニック」。現院長の山前正臣医師は、最新のリウマチ治療の知見をもとに、個々の患者さんに合う治療を選択する。さらにリウマチの専門知識を持つ看護師や医療クラーク、薬剤師らとのプロフェッショナルチームが一丸となって治療を実践し、その絶大な信頼から海外からも患者が訪ねてくる。
院長
山前 正臣
2001年聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了。2013年より新横浜山前クリニック院長。日本内科学会認定総合内科専門医。日本リウマチ学会認定リウマチ専門医。
最新の治療で寛解できる そのためには早期診断が大切
先進の関節リウマチ治療を提供する同院は、リウマチ治療の先駆者として48年の歴史を持つ。2015年に現在の山前正臣院長によって、リウマチの最新診察に対応した施設に刷新され、現在に至るまで、最先端のリウマチ治療を提供している。
山前院長は、抗リウマチ薬がまだ十分ではなく、効果的な診断・治療が確立されていなかった時代から、リウマチ診療の劇的な進化を目撃してきた専門医の一人だ。30年前は痛み止めが治療の主流で、十分な関節リウマチの治療方法がなかったが、今は関節リウマチが寛解する時代がやってきた。山前院長は、「リウマチが寛解する時代であるからこそ、早期診断、早期治療が必要です」と話す。
関節リウマチは自己免疫および炎症性疾患であり、慢性的な炎症により軟骨や骨が破壊されることで、痛みやこわばり、関節の不安定さおよび変形を引き起こす。炎症が生じる主な部位は関節滑膜であり、一般的には手関節、手指関節、足関節、足趾関節、膝関節、肘関節、肩関節などに発症する。
関節リウマチの国内患者数はおよそ100万人と言われ、女性に多い病気だが、近年では60~70歳代の発症や男性患者の増加が見られる。
関節の変形と合併症を未然に防ぐためには、早期治療が不可欠
関節リウマチの初期症状は、関節の腫れや朝のこわばり、倦怠感などである。これらの症状を感じたら、リウマチ専門医を受診することが推奨される。診断には2010年の ACR/EULARの関節リウマチ分類基準が用いられる。この基準では、一つ以上の関節が腫れている患者に対し、主治医が必ず確認することが求められるが、現場ではこの基準を使用しないために診断が遅れるケースも多いという。
「早期に診断することで早期治療につながり、関節の変形を未然に防ぐことができます。診断が確定したら、できるかぎり早めに抗リウマチ薬を用いることが大切です。関節リウマチの寛解を目指しましょう」
関節リウマチの治療を始めることに迷う患者もいるが、早期診断・早期治療を怠れば、関節破壊は止まらず進行し続ける。「発症から3か月ほどの初期段階では、レントゲンには異常が見られないことが多いですが、炎症が強く進行も早い時期。この段階での早期診断と治療が非常に重要です。次に中期段階、発症から3年ほど経過すると、関節の骨が一部破壊され始め、変形は徐々に進行していきます。この時期には骨びらんや関節裂隙の狭小化が生じ、これが関節の不安定さや痛みを引き起こす原因になります。そして後期段階、発症から9年ほど経つと、治療が遅れた結果、広範囲にわたる関節の変形と破壊が進み、痛みや運動機能の障害が一層増大します」
関節リウマチの治療は、関節の変形を抑えるだけでなく、全身の健康リスクを軽減するためにも重要だ。
「関節の炎症が続くことで、動脈硬化が進行し、結果として心筋梗塞のリスクが高まります。また、疾患活動性が高い患者では、リウマチ肺と呼ばれる間質性肺炎の発症リスクも上昇します。これらの合併症は、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、生命に関わるリスクも伴います。したがって、関節リウマチは単なる関節の病気と捉えず、全身への影響を考慮して、早期診断・早期治療が不可欠なのです」
近年、高齢者の関節リウマチ患者が増加しており、男性にも多く見られる傾向がある。比較的急に発症することがあり、特に高齢者の場合、肩や膝などの大きな関節から痛みが現れることが多い。「検査でリウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性になるケースが多く、それがリウマチ性多発筋痛症や変形性関節症と誤診される原因にもなります。例えば、60代後半の男性が急に肩関節や膝関節の痛みを感じ、検査ではリウマトイド因子も抗CCP抗体も陰性であったため、近医で関節リウマチではないと診断されてリハビリに通っていましたが、抗リウマチ薬を早期に使用することで症状が改善されました。関節炎の診察では、血清学的陰性関節リウマチの可能性も考慮しなければなりません。リウマトイド因子が陰性だからといってリウマチではないと断定するのは大きな間違いです」このような間違いを防ぐためにも、日本専門医機構が認定した専門医にまず受診することが重要です。
海外に引けを取らないリウマチ医療の専門チームを編成
アメリカではリウマチ診療において診療看護師(NP)などが導入されている。英国ではリウマチ看護師の役割が細かく定められている。日本ではリウマチ診療にこのような職種や役割の決まりがない。そのため、同院では2015年に現行の保健師助産師看護師法に準拠しながら、リウマチ専任看護師、医療クラーク、登録薬剤師を含むリウマチ医療の専門チームを編成し、多職種が協力しながら包括的な診療を行う。旧来の業務を見直し、新規治療に見合うよう診療業務を5分割し、医師を含む各職種に横断的に再分配した。医師とともに看護師は関節評価や治療計画の確認、患者指導や副作用対策などの業務をローテーションで行う。
チーム体制によるきめ細かなケアは、患者の精神面にも好影響を与えている。同院では、看護師や医療クラークが深く寄り添い、心身両面をサポートすることで、関節炎を発症する前の生活を目指すことができている。通院する患者さんの中には、「リウマチのことを忘れて日常生活を過ごせるようになった」と喜ばれる方も多く、症状と付き合いながら園芸を楽しんだり、テニスやゴルフ、ジョギングなどのスポーツを続けたりしている人もいる。
「病気だからこうしなさいと押しつけるのではなく、『何をしてもいいけれど、痛くなったらやめてください』とお話ししています。患者さんにも自分の人生があり、病気はその一部かもしれませんが、人生のすべてにはしてほしくないのです」
医師が患者の状態を理解し、患者の希望を尊重することはもちろんだが、最も大切なのは医師と患者が双方向の理解を持つことだ。治療の目的や必要性、治療方法、有効性と安全性について話し合うことで、患者も前向きに治療に参加できるようになる。山前院長は、「リウマチ治療はまだまだ進化しています。とても良い治療法がありますので、患者さんの個々の状況に合わせて治療を選択し、彼らが積極的に治療に参加できるような環境を整えることが、私たちリウマチ診療チームの責任です」と力を込めた。
INFORMATION
新横浜山前クリニック
横浜市港北区新横浜3-20-3 リバサイドビル4階
TEL 045-471-6307
https://www.y-rheum.jp/
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