病院がチョコレートの店をオープン!?　発達特性を持つ子を全力で支援する、クリニックの「新たな挑戦」とは

あらゆる年代のあらゆる心の病気を治すため「よろず」と命名

「子ども、親、祖父母という全年齢層の心のかかりつけ医になり、発達特性、統合失調症、躁うつ病、認知症などあらゆる精神症状に対応したいという思いから院名に『よろず』と入れました」と岩崎院長は微笑む。

　同クリニックの患者は小学生を中心に、中学生、未就学児、高校生、成人まで幅広い年齢層にわたる。治療は有資格のカウンセラーがカウンセリングを行い、岩崎医師の診断のもとプランを立てる。

「発達特性を持つ子どもの中には、接し方を変えるだけで投薬が不要となるケースも少なくありません。当院では看護師や心理士などのチーム医療を実践してきましたが、24年の6月から診察室を増設。作業療法や言語療法を別の静かな環境で行えるようにしたほか、心理士や作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士も増員し、診療体制を整えています」（岩崎医師）

デイケアとナイトケアに加えて新たな労働環境も

　同クリニックでは、小学生から20歳未満の若者を対象にしたデイケアとナイトケアを提供している。デイケアは、発達特性を持つ子どもたちが勉強やレクリエーション、作業活動を通して能力を伸ばす「ハビリテーション」を実施。同プログラムは岡崎市や愛知県教育委員会に認定され、学校の出席としてカウントされるため受験時に内申点で不利にならない。不登校が年々増加する中、近隣市町村からの参加者も増加中だ。ナイトケアでは宿題や学習支援を行い、一人一人に合った学ぶコツを見つけ、楽しく学ぶ習慣を身につける。

「発達特性を持つ子どもたちを支援するためならどんな努力も惜しまない」と語る岩崎医師の次なる取り組みが、2024年11月にクリニック近くでオープンする「久遠チョコレート＆ドゥミセック岡崎店」だ。9月のプレオープンは大好評で、11月下旬のグランドオープンを多くの人が待ちわびている。元結婚式場をメルヘン調に改装したおしゃれな空間で、こだわりの本格ピュアチョコレートを提供する。障害者雇用に注力する久遠チョコレートに以前から関心を寄せていた岩崎医師の念願が、フランチャイズとしてついに実現した。

「全国約40店舗の中でも上位の売り上げを目指したい。工賃は、徐々に引き上げて県の法定最低賃金をクリアすることを目指します。現在、全国の就労継続支援B型事業所の賃金はあまりにも低すぎる（平均工賃は月額17,031円、時給換算で243円 ※1）。精神科のクリニックに通院する方々が正当な対価を得られ、誇りを持って働ける環境を作らなければなりません。その一歩になれば」と岩崎医師は力強く語った。

※1 出典:厚生労働省「令和4年度工賃（賃金）の実績について」