術後の尿漏れ防止や性機能温存が見込めるアクアブレーション治療は、2023年に保険適用となった新しいロボット手術だ。頻尿・夜間頻尿など前立腺肥大の症状を「年のせいと諦めないで」という加藤大貴医師に話を聞いた。
泌尿器科 加藤 大貴
2009年浜松医科大学医学部卒。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会専門医ほか。専門領域は排尿・蓄尿障害、小児泌尿器科など。医学博士。
前立腺肥大症とは
前立腺の通常の大きさは小粒のイチゴほどですが、加齢に伴って肥大し、キウイフルーツくらいになることもあります。前立腺肥大症の症状は、トイレが近い、夜に何度もトイレに起きる、尿意を催すと我慢できない、尿の勢いが弱いなどですが、進行すると尿失禁、尿路感染や膀胱結石などの合併症が起こることもあるので、早めに受診することが大切です。
当院では、前立腺肥大症が疑われる患者さん全員に、簡単な問診票、検尿、超音波による前立腺体積の測定、排尿の勢いを見る尿流測定などを行います。検査で痛みを伴うものは1つもありません。結果を総合的にみて前立腺肥大症と診断したら、患者さんと相談して治療法を決定します。
治療は、症状が比較的軽ければ薬物療法から始めます。薬で十分な効果が得られない場合や、症状が重く合併症がある場合には手術が必要になります。
アクアブレーション治療
当院は機能温存手術に力を入れ、24年7月にアクアブレーション治療を導入しました。天然由来の水(アクア)の力で肥大した前立腺を切除する新しいロボット手術です。狙った箇所だけを、精液の出口を残してロボットが自動切除するため、従来の手術に比べ射精機能・勃起機能を温存する能力が高いとされています。また、電気メスやレーザーと違ってアクアは熱を発しないため、排尿を司る神経に負担がかからず、術後の尿漏れはほとんど起こりません。
ただし、保険適用となるのは前立腺体積が50ml以上の場合です。50ml未満の患者さんに対しては、経尿道的水蒸気治療や経尿道的前立腺吊り上げ術を提供しています。経尿道的水蒸気治療は水蒸気で前立腺組織を壊死させ、尿道を広げる治療法。経尿道的前立腺吊り上げ術はインプラントで尿道を広げる治療法です。いずれも低侵襲で身体への負担が少なく術後の尿漏れもほとんどなく、性機能を温存できる可能性もあります。
当院の泌尿器科は男性と女性の専門医が在籍し、女性泌尿器科は女性泌尿器科医が診療しています。前立腺肥大症だけではなく過活動膀胱など広く排尿障害の治療を行い、「快適なおしっこライフを患者さんに提供する」が私たちの理念です。
おしっこの症状が改善すると生活の質が大きく向上します。どんな些細なこともまずはご相談ください。
INFORMATION
東京衛生アドベンチスト病院
東京都杉並区天沼3-17-3
TEL.03-3392-6151(代表)
https://www.tokyoeisei.com
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