ロッキード事件の捜査、裁判を担当した東京地検特捜部の元検事、堀田力氏が11月24日に亡くなった。90歳だった。堀田氏は今年5月、ジャーナリストの村山治氏と奥山俊宏氏のインタビューに応じ、ロッキード事件の捜査について、衝撃的な証言を残していた。証言を報じた記事を再公開します。(初出:「文春オンライン」2024年10月10日公開)

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当時の特捜部検事が詳細に証言

「P3C関係のやつは聴くなという、それが唯一の、尋問について私どもが受けておった命令です」

 ロッキード事件の捜査に特捜部検事として携わっていた堀田力氏の口から衝撃的な証言が飛び出した。

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 今年5月に行われたインタビューで、この証言を引き出したのは、ジャーナリストの村山治氏と奥山俊宏氏。ともにロッキード事件の真相を追い続けてきた。

 なぜ、この証言が衝撃的なのか?

 まず、P3Cとは何かを説明しよう。

堀田力氏(奥山俊宏撮影)

 P3Cは現在も日本の海上自衛隊に配備されている哨戒機である。アメリカのロッキード・マーティン社が製造しており、1977年に自衛隊への導入が決まって以来、日本政府は1981年から97年の間に101機を購入、その合計額は1兆円超に上る。P3Cの主な任務は、日本近海を航行する潜水艦や不審船舶の監視である。ロッキード・マーティン社は1994年にロッキード社とマーティン・マリエッタ社が合併してできた会社で、元々P3Cの開発・製造をしてきたのは、ロッキード社。1970年代、航空機メーカーであるロッキード社は自社製品を売り込むために世界中で裏金を政府高官にばらまいた。

海上自衛隊に配備された哨戒機P3C ©時事通信社

 日本では、およそ30億円が当時の田中角栄首相をはじめとする日本の政治家や高級官僚に渡され、その金を受け取った彼らはロッキード社が製造する旅客機トライスターやP3Cの購入に便宜を図ったのではないか、という疑惑が1976年に浮上した。それがロッキード事件である。