“防災月間”と言われる9月。台風シーズンを前に、災害対策を見直したい人も多いのでは。特にペットを飼っている人にとっては、小さな家族の命を守るための対策は必須だ。災害時には“避難所トラブル”も起こりやすい昨今、いざというときペットとともにどう生き抜けば良いのか。ペット防災を支援するNPO法人アナイスで理事長を務める平井潤子さんに話を聞いた。

大地震で起こった“ペットトラブル”「大型犬が家の中に入り込んで出産してしまい……」

――平井さんが「ペット防災」に携わるようになったきっかけは、どんなことだったのでしょう。

平井潤子さん(以下、平井) 2000年に起きた三宅島噴火災害の際、避難してきた方のペットを預かるシェルターで活動したことがきっかけです。その後、2002年にアナイスを立ち上げました。

 ペット防災の活動を四半世紀にわたって続ける中で、目指すところも変化してきました。最初はシェルターの動物のお世話からスタートしましたが、被災した飼い主さんが生活を元に戻そうとしたときに、ペットが足枷になってしまうことがある。そこで「安心して預けてもらい、その間に復興に取り組んでいただこう」と考えるようになりました。動物愛護という視点だけではなく、人をサポートする活動でもあるんです。ペットも大事ですが、人の復興支援が主軸です。

平井 潤子(ひらい じゅんこ)
NPO法人アナイス理事長。公益社団法人東京都獣医師会顧問。2000年の三宅島噴火災害をきっかけに、2002年にアナイスを設立。災害発生時には国や自治体と連携した現地救援本部が実施する被災動物救護活動に従事するほか、被災地に赴き現地情報を収集・分析し、発信する活動に取り組んでいる。環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」の編集や、動物防災対策に係るアドバイザーとして国、自治体等の広域支援訓練等に参加するなど、ペットの防災に関する第一人者

 また、災害の傾向も25年間で変わってきました。以前は地震対策が中心でしたが、近年は水害対策も重要になっています。また、毎年の猛暑も災害の一つです。被災地ではエアコンも空調もない中でストレスフルな環境になり、感染症も広がりやすくなる。そういう中でのペットの避難はまだまだ課題が多いです。

――災害時の避難について、環境省はペットと一緒に避難場所へ向かう「同行避難」を推奨していますよね。これはなぜなのでしょうか。

平井 同行避難しなかった場合の問題を考えると、理由が分かります。飼い主が危険な場所に残ったり戻ったりすることで、飼い主自身の安全が脅かされてしまう。消防の方も危険な場所に何度も救助に行くことになり、救援側の二次被害のリスクも高まります。

 また、被災地にペットを残せば餓死の危険があり、動物福祉に反します。かといって放してしまえば野良になった動物が群れで行動し、人を怖がらせたり排泄で他人の財産を汚すこともある。東日本大震災では、壊れた玄関から入り込んだ犬や猫が室内を汚したり、大型犬が家に入り込んで出産してしまい、出産直後の興奮状態で家主が家に入れなくなったりした事例もありました。

 環境省の同行避難推奨は、飼い主の安全、救援活動の効率化、動物福祉、地域への迷惑防止など、社会全体の安全を考えた総合的な判断なんです。

避難所では“ペットが好きな人への対策”も重要

――ペットの同行避難で懸念されるポイントはありますか。

平井 1つには、都市部特有の問題があります。犬については、外でつないで飼う習慣がほぼないため、飼い主も犬もつながれることに抵抗感があるんです。

 猫はより深刻で、キャリーバッグに入れて避難しても、トイレは入れられないし運動もできない。結局、いつの間にか避難所から移動し、姿が見えなくなってしまうケースが多いです。

画像はイメージです ©Aflo

 避難所では、ペットの排泄物のニオイや鳴き声などで、飼っていない人とのトラブルも起こり得ます。しかし実は、避難所では「ペット嫌いな人」への対策だけでなく、「好きな人対策」も重要なんです。飼い主が出かけている間に、動物好きな人が勝手に触ったり、キャリーから出して逃がしてしまったりする。悪意はないのですが、こうしたトラブルも多いんです。

 だからこそ、避難所での集団飼育では飼い主同士が協力して見守りあう共助が大切ですし、家の安全を確認してから在宅避難したり分散避難をする方が、ペットのストレスの軽減にもなり合理的だという意見も出ています。

――我が家では文鳥を2羽飼っていますが、自宅に業者など知らない人が来るだけでプチパニックになるので、避難所に連れて行ける気がしません。「在宅避難」のメリット・デメリットはどんなことでしょうか。

平井 犬猫や鳥などにとっては住み慣れた環境で安心でき、飼い主も周りに気を使わないのが在宅避難のメリットです。特に猫は、避難所では小さなケージで過ごすことが多く運動できないので、在宅の方が適しています。

 ただし、課題もあります。電気や水道が止まったとき、人間にとっては特にトイレが使えないのが大きな問題です。能登半島地震でも、家は修理したものの下水が治っていないため、自宅と仮設住宅の往復を余儀なくされた方がいました。

 在宅避難を考えるなら、まず住まいの安全対策をしっかり行なうことが大切です。夜寝る部屋だけでも家具を固定するなどして安全な場所を確保し、ペットが留守番する時間があるなら、その部屋にいつでも逃げ込めるようにしておきましょう。また、毎年の猛暑も災害と考えれば、停電したときに直射日光があたって暑くなる部屋ではないかも確認しておく必要があります。

ペットとの在宅避難の“必需品”

同行避難、在宅避難、分散避難……いざというとき、どれを選べば良い?

――「分散避難」という選択肢はどんな時に適しているのでしょうか。

平井 ペットと飼い主がバラバラの場所に避難する分散避難は、短期的には有効です。例えば犬の散歩仲間がいるなら、台風が来る時などに備えてショートステイの練習を普段からしておく。「一晩避難するから、この子をお泊まりさせて」と安全な場所に住む仲間などに頼むのも、分散避難です。

画像はイメージです ©Aflo

 大きな災害時も、生活再建のためにペットをずっと手元に置いておけない場合は、災害時に設置されるシェルターや一時預かりのボランティアさんに預かってもらうという手もあります。これも生活再建に専念しながら、ときどき面会に行ってペットを引き取る準備を整えるという意味ではメリットがあります。ただし、まずは飼い主同士で助け合える関係を作っておくことが前提です。

――同行避難、在宅避難、分散避難のどれを選ぶかの判断基準はありますか。

平井 まず同行避難は、災害直後の飼い主と動物の安全確保という意味では基本になります。津波が来る場合は高台に、大きな揺れが続く場合には一時(いっとき)避難場所に避難し、まず命の安全を確保する。それからペットと避難所に行くのか、在宅で過ごすのか、誰かに預けるのかと分かれていきます。

 判断のポイントは、自宅の安全性、ペットの性格や種類、そして地域のコミュニティです。都市部では同行避難が難しいペット(つながれ慣れていない犬や猫)は在宅避難が現実的でしょう。地方で地域コミュニティがしっかりしていて「私が朝ご飯をあげておくから」などといった近所のフォローがある場合、分散避難による在宅飼育——飼い主は避難所で過ごしながらペットのお世話に通う——という方法もあります。

 重要なのは、一つのスタイルだけで乗り切ることを考えるのではなく、時間の経過とともに適した方法を選択できるよう、いろんな避難場所や預け先を用意しておくことです。

「ペットの命に関わることも」在宅避難に必須の “電気” を確保するために

――在宅避難を選択肢に加えるために、災害時に向けて準備しておいたほうが良いことはありますか。

平井 電源が必要なペットにとって、停電は命に関わる問題ですよね。水槽で魚や水生の爬虫類を飼っている場合、エアーポンプが止まると酸素不足で死んでしまいます。電源を確保する手段として、ポータブル電源の用意は有効でしょう。

Jackery ポータブル電源 2000 New(サンドゴールド)

 また、糖尿病の犬猫のインシュリン注射をしている方も多いですが、薬液は冷蔵保存が必要です。冷蔵庫への電気が止まると薬が使えなくなるので、まずは冷蔵庫の開け閉めを避け、冷凍庫に保冷剤を凍らせておいて冷気を逃がさないよう工夫する。それでも限界があるので、こちらもポータブル電源で小型の冷蔵庫を動かせるようにしておくと良いと思います。

――他にポータブル電源の活用方法はありますか。

平井 実際の被災地で最も多い相談は、暑さ対策です。エアコンまでは動かせなくとも、ポータブル電源があれば、停電時のペットの熱中症対策も効率的にできます。短頭種の犬など暑さに弱い子のためには、体が冷やせるように冷却マットをポータブル電源につなぐ。小型扇風機と濡らしたすだれや霧吹きなどを組み合わせて気化熱で涼しさを得るなど、工夫次第で活用範囲は広がります。熱中症になってしまったときのために、冷凍庫で保冷剤を凍らせておくのも一手ですね。

 ペットシーツを濡らすとジェル状になって少しひんやりするので、その上で過ごさせるなど、電気がなくても最低限できる工夫はあります。でも、ハードでカバーできるなら、もっと助かる方は多いはずです。

 私はペット防災と人の防災を分けて考えません。まずは飼い主やご家族が無事であること、その上でペットも守れる対策を講じていただければと思います。家族の安否確認なども含め、あらゆる情報を得るのにスマートフォンの充電は必須です。ペットのためにも人のためにも、在宅避難を考えるなら電気の確保は重要だと思います。

大切なペットを暑さ・寒さから守る

見守りカメラの充電にポータブル電源を使用すれば、外出時に停電した場合も、遠隔でペットの安全を確認できる
左:Jackery ポータブル電源 2000 New(サンドゴールド) 右:Jackery ソーラーパネル SolarSaga 200

――ポータブル電源を選ぶ際のポイントを教えてください。

平井 同行避難、在宅避難、分散避難など、いろんなところに移動する可能性を考えると、ある程度持ち運びやすいものがいいですね。車中泊が多いペット連れの方にとっても、車内で使えることは大切です。災害時にはガソリンがなかなか入手できないケースも多いですから、ソーラーパネルで充電できる機種を選んでおくと安心です。

 そして何より重要なのは「分かりやすさ」です。高齢の方でも理解しやすい説明があるかどうか。ポータブル電源にはさまざまな容量のものがありますが、何ワットで何がどのくらい使えるのか、ソーラーパネルでの充電なら何時間でフルになるのか、といった具体的な情報も把握しておく必要があります。

Jackeryのポータブル電源なら、ディスプレイに出力ワット数と残り稼働時間の目安が表示されるので、知りたい情報が一目で分かる

 電気の復旧はインフラの中で一番早いので、3日間をどうしのぐかが重要と言われています。飼っているペットに応じて「冷却マットなら○日持つ」「インシュリン保存用の小型冷蔵庫なら○時間」など、具体的な使用例と持続時間の目安を立てて選びましょう。たとえば、エアーポンプの消費電力は1時間あたり2〜3ワットと小さいので、2000ワットのポータブル電源があれば3~4日間程度は使えます。

Jackery ポータブル電源 2000 New」の場合

※消費電力は編集部調べ。予測稼働時間はJackeryシミュレーション想定値です。小電力の電子製品では、計算が正しくない場合があります

 平時から動作確認をしておくことも重要です。日常的に冷却マットを使っているなら、それをポータブル電源につないで、どのくらい持つのかを数値だけではなく実際に確認しておく。充電しながら使用できるモデルなら、普段から電源や機器とつなぎっぱなしにしておくと、外出時の停電も安心ですよね。

Jackery ポータブル電源 2000 Newはパススルー機能を搭載しているため、コンセントで充電しながら電化製品を使うことができる。普段からつないでおけば、停電時にも機器がストップしてしまう心配がなく安心

――ペット防災において、一番大切なことは何でしょうか。

平井 大切なのは、ペット防災を「ペットのためだけ」に考えないことです。人のためにも役立つが、ペットのためにもなる——そういう視点で備えてほしいです。

 例えば、ポータブル電源による熱中症対策は、ペットだけでなく小さなお子さんや高齢者が留守番している時にも有効です。人に優しい安全な環境というのはペットにも安全なわけです。

 まずは飼い主自身の安全確保が第一。飼い主が無事でなければペットの安全を守ることはできません。その上で、平時からペットと人が共に安全に過ごせる環境を整備し、いざという時に慌てないよう備えることが重要です。災害は突然やってきますが、準備は今からでもできるのですから。


Jackery ポータブル電源 2000 New

本記事で紹介したサンドゴールドの他、定番のブラックも

2042Whの超大容量に加えて、定格出力2200W(瞬間最大4400W)の高出力のため、ほぼすべての家電が動かせます。2000Whクラスの市場モデルより40%小さく、重量も34%の軽量化を実現しました。
約4000 回の充放電サイクルを持つ長寿命のリン酸鉄リチウムイオン電池を使用しており、毎日使っても10年間使えます。最短102分でフル充電可能な緊急充電モードや、電化製品を守るUPS機能も搭載。「SolarSaga 200」と組み合わせれば、コンセントなしで約15時間でフル充電が可能です。
※2000Whクラス双方向インバーター搭載のリン酸鉄モデルにおいて、2024年8月時点、Jackery調べ

公式サイトで購入する


新たな防災のカタチを提案するイベントを初開催!

さまざまなカルチャーと防災をクロスオーバーしたトークショーやブースコンテンツ、ポータブル電源のみを用いたDJ&ライブパフォーマンスをお楽しみいただけます。

<イベント名>Jackery PLAY PARK : EXPRORE & GATHER
<実施日>9/20(土)11時〜19時30分・9/21(日)11時〜18時
<実施会場>東急プラザ表参道「オモカド」6階イベントスペース「LOCUL」内・おもはらの森
イベント詳細はこちら

INFORMATION

◆スペック
Jackery ポータブル電源 2000 New
価格:239,800円(税込)
容量:2042Wh
サイズ:約335x264x292㎜
重量:約17.9kg
AC入力:100V-120V~50Hz/60Hz、最大15A
AC出力:3ポート合計2200W(瞬間最大4400W)
AC充電時間:約2時間
ソーラー充電時間:15時間(ソーラーパネル200W)

◆問い合わせ:株式会社Jackery Japan 
公式サイト:https://www.jackery.jp
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