【金融・相続特集】
自分らしく備えるために いま考えたい資産運用と相続対策

物価上昇が続くなか、資産をどのように守り、育てていくかが問われている。また、不動産価格の上昇などを背景に、相続税の負担増が現実味を帯びつつある。資産運用や相続対策への関心が高まっているものの、断片的な情報を頼りに自己流で進めてしまうと、思うような効果が得られない可能性もある。本特集では、専門家の知見を基に、いま考えておくべき資産運用と相続対策のあり方を探る。

資産運用でインフレに負けない家計を築く

ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー
深野 康彦
メディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、税金、年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行う。

 2025年は日経平均株価が初めて5万円台に到達した記念すべき年だった。26年も日経平均株価は大幅上昇でスタートし、欧米の主要株価指数も過去最高値圏を記録するなど、力強い滑り出しとなった。そんな中、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「過去3年間の世界的な株価上昇はやや出来過ぎ」と指摘し、「世界的な株高は当面継続する可能性もありますが、過信は禁物です」と注意を促す。

 とはいえ、国内に目を向ければ、インフレ環境はいまだに継続している。資産の一部を株式投資などの運用に回し、インフレに負けない家計を築くことは、今後とも重要な自助努力といえそうだ。

 個人の資産運用の中核商品といえるのが投資信託だ。

「個人の資産運用であれば、まずはNISA(少額投資非課税制度)を使って、投資信託を少額からコツコツ積み立てていくのがいいでしょう」と深野氏はアドバイスする。毎月一定額ずつ積立投資を実践すると、価格が安ければ多くの口数を、高ければ少ない口数を買うことになる。特に重要なのは株価の下落局面だ。安値でたくさん購入できるため、仕込みの時期となる。下落局面でも運用をやめずに買い続けていれば、将来的に価格が上昇した際に大きな利益が期待できる。

「時間軸を長めに取れば、この先も調整局面はたびたび訪れるでしょう。その場合は安値で仕込むチャンスと思い、淡々と投資を継続することが肝心です」(深野氏)

 商品の選択肢が広いのも投資信託の魅力だ。昨今では投資を通じて地域の企業を応援できるご当地ファンドもあり、人気を集めている。信託報酬の一部を寄附に使うファンドもあり、金銭的なリターンを得ると同時に社会貢献も果たせる金融商品として注目されている。数ある商品の中から、長期で保有したくなるファンドを選ぶことが資産運用を成功に導く第一歩かもしれない。

早期の備えが理想の相続につながる

 25年12月に決定した26年度税制改正大綱では、相続税の負担増となりかねない改正が盛り込まれた。不動産等を購入することで評価額を圧縮し、相続税を減らす節税対策を念頭に置いた改正といえる。

「今後、関連法案が成立すれば、実行されることになります。成立しなかったとしても、不動産価格の上昇が著しい現状では、相続税の負担増につながる評価方法へと見直される可能性が高まっていることは認識しておくべきでしょう」と深野氏は指摘する。

 国税庁によると、24年1年間の被相続人数(死亡者数)は160.5万人で、そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は、約16.7万人だった。相続税の課税割合は10.4%で、14年の課税割合が4.4%だったことを考えると、過去10年で相続税の課税対象者数は倍以上に増えたわけだ。

 相続への備えは、元気なうちに早めに行動しておくことが重要であり、まずは相続に対する想いや希望を家族と共有しておきたい。それには遺言書を書いておくことが効果的だ。昨今では、AIで遺言書作成をサポートしてくれるサービスが登場している。作成した遺言書からAIが遺産分割の内容を整理し、概算の相続税額を自動で計算してくれる機能もあるという。「自分の財産を広く社会のために役立てたい」との思いから遺贈・寄附を選択する人も増えている。その場合も遺言書を作成することが欠かせない。

 深野氏は「相続は『点』ではなく『線』で考えましょう」とアドバイスする。相続時の節税対策ばかりに気を取られるのではなく、長期的な視点に立った資産承継や家族の幸せを優先した対策を立てる必要がある。そのためにも遺産分割に関する家族間の協議、納税資金対策、節税対策の順番で検討するのがいいだろう。「相続は、先送りすればするほど、当初思い描いていた姿から離れていくものです。だからこそ、早めの準備が欠かせません。誰にとっても『今日』は、これからの人生で最も若い日ですから、思い立ったときこそが最適なタイミング。早期の備えが理想の相続につながるはずです」と深野氏は強調する。

出典元

文藝春秋

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