「こうした点検をもとに、補修作業を進めていきます。作業の内容にもよりますが、ほぼ毎日何カ所かで工事をしています」(名波さん)
作業内容は多岐にわたる。300mほどのレールを一晩で交換することもあれば、レールとまくらぎの間に入っているパッキンを数ミリ単位で調整して歪みを直す繊細な作業もある。
もちろん昼間は電車が走っているので、作業ができるのは夜間に限られる。それも、終電から始発までの短い時間で。東京の電車は始発が早く、終電が遅い。だから、安全に作業ができる時間帯はせいぜい3時間ほどだという。
「ですから、もうこの仕事は段取りが大事なんです。施工会社と何度も検討を繰り返し、作業内容や作業工程、必要な作業員の人数まですべてを事前に打ち合わせておく。規模の大きな作業になればなるほど、一晩ですべてを完了させるのは難しいので、どこまで準備をしておくのかも重要です」(名波さん)
つまり、津吉さんや名波さんの仕事はこういうことだ。日中は点検や施工会社との工事に関する打ち合わせや準備・段取り。夜には徒歩での巡回点検や、工事中に何かあった場合に備えての泊まり勤務。もちろん毎日泊まり勤務があるわけではないが、鉄道はほとんど24時間、365日休まずに動き続けている。盆暮れ正月も関係なく、いつ何が起こるか分からない。それに備えるのも、技術者の重要な仕事なのだ。
夏の暑さでは膨張し、冬の寒さでは収縮する鉄道レール
「大雨や地震で基準の数値を超えて列車の運転を見合わせた場合には運転再開前に巡回点検をしないといけないですし、駅間で人身事故があった場合に我々が対応に出て行くこともあります。あとは、季節によってレールにも変化があるんですよ」(津吉さん)
レールは鉄でできている。だから夏の暑さでは膨張し、冬の寒さでは収縮する。列車の走行によりレールに小さなキズができていると、それが冬に収縮した際に破断に繋がることがあるのだ。
また、雨が降ってレールの下の路盤が少し緩み、ゆがみの進みが早くなる、なんてことも。何年経ったらレールを交換、など計画通りに作業を進められるわけではないようだ。
「なので、1年間の計画を立てたうえで、あとは点検の結果を踏まえて優先順位をつけて、施工会社と打合せを行い月単位でより詳細な工事のスケジュールを組んでいきます。その上で、我々保線だけでなく電気や土木関係の工事もあるので、そことの調整もしていく。それでようやく工事ができるんです」(津吉さん)
津吉さんと名波さんによれば、「工事をしたい場所はいくらでもある」という。大きな事故につながるリスクが高いわけではない。ただ、都心の鉄道は走る列車の本数も両数も乗せているお客の人数も桁違い。線路にかかる負荷は相当に大きいのだ。
