25歳で「自分らしくあれ」と逆矯正
「10代のときからずっと枠からハミださないようにハミださないようにと、めちゃくちゃ気をつけて生きてきたのに、今度は25歳で突然『自分らしくあれ』と逆矯正を受けてしまったんです。しかもそれを言ったのは何人もの売れっ子タレントを育て上げてきた芸能界の大物。これが呪いとなって1年近く引きずりました」
スカートが1センチでも短いと怒られ、紺色はNGだけど白ソックスはOK。そんな理不尽なブラック校則でコテンパンに個性を叩き潰された後、社会に出ると一転、「自分らしく」のプレッシャーにさらされる。
大木さんのいた芸能界のみならず、日本で教育を受けてきた20代、30代なら誰しもがこんな矛盾だらけのシステムに翻弄されてきただけに、身につまされるものがある。
「どこか着飾った自分を見透かされたんだと思います。これまでいた世界を飛び出し、自分に何ができるかを考えたとき、会社員になって、そこでライターとして死に物狂いで働きました。一時再起不能なまでにメンタルが追い込まれましたが……」
10代の頃から大人の顔色を窺い続けてきた大木さんは、すべてをなくし底つきをしてはじめて、彼らのまなざしを跳ね返すことになる。
写真=末永裕樹/文藝春秋
おおき・あきこ/ライター。2005年、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)で女優デビュー。数々のドラマ・映画に出演後、2010年、秋元康氏プロデュースSDN48として活動。その後、タレント活動と並行し、ライター業を開始。2015年、しらべぇ編集部に入社。2018年、フリーランスライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』。