はじめまして、日刊スポーツ・楽天担当記者の湯本です。

 楽天担当記者になって、「よかったね」とたくさんの人から言われる。宮城県仙台市出身で野球少年。小学生のときに地元に「東北楽天ゴールデンイーグルス」が誕生した。以来、足しげく球場に通うように。東京都内の大学に進学してからもそれは変わらず。2013年、球団史上初のリーグ優勝を西武ドームのライトスタンドで見届けた光景は今でも目に焼き付いている。

 大学卒業後に日刊スポーツ新聞社に入社し、数年がたってから野球記者となった。初めてのプロ野球担当としてヤクルトの取材をしていた21年にチームは優勝。その後、ご縁があって、22年から地元楽天の担当となった。

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 担当をする球団には思い入れができる。今でもヤクルトの試合結果やチーム状況に目がいくが、楽天は昔からずっと見てきたチーム。今季は開幕からあまり勝利を積み重ねられず、低迷しているが、ポジティブな要素はたくさんある。日刊スポーツ楽天担当のTwitterでは、勝っても負けても「今日のポジ」とよかったプレーを並べているが、巻き返しへ向けての「ポジ」は伊藤裕季也内野手だろう。

伊藤裕季也 ©時事通信社

「彼は明るいし、ハッスルしてくれる」

 好打者から見たブレーク候補生は――。楽天今江敏晃1軍打撃コーチが、伊藤裕季也内野手の成長へ、日々背中を押している。「非常に楽しみです。活躍していかないといけない選手なので」と笑顔で期待した。

 関係の深さが垣間見えた。5月26日、今江コーチが2軍打撃コーチから1軍へ配置転換が発表された。同日日本ハム戦の試合前に、報道陣が今江コーチを囲んだ。引き締まった表情で質問に答えていたが、突然頬を緩め、「あれぐらいの気持ちで試合に臨んでほしいですね」と、人さし指を前方へ差した。私を含め、報道陣が一斉に振り返ると、伊藤裕がニコニコしながら取材の様子を見守っていた。うんうんと、うなずく姿に、どっと笑いが沸き起こった。

 ベンチでは人一倍大きな声を出す。練習中の表情はいつも明るい。今江コーチは「彼は明るいし、ハッスルしてくれる。ああやって結果も出てくれば、本当にチームを乗せていってくれる存在かなと」と目を細める。昨季途中にトレードでDeNAから移籍してきた右の大砲候補。今季はブレイクの兆しを見せ始めている。出場試合数はすでにキャリアハイ。3番を任される試合もあった。飛躍の要因を今江コーチに聞くと「思い切って振りにいけるようになった」と教えてくれた。

 昨年は育成内野守備走塁コーチ。シーズン後に2軍打撃コーチとなった。昨秋のフェニックス・リーグから、本格的に伊藤裕の打撃を見るようになった。自主トレ期間も相談の連絡があり、アドバイスを送ってきた。技術面での指導もするが、意識しているのは、打席での心構えや自身の経験を伝えること。

「確実性というのはもちろんそんな簡単じゃない。まずは自分のスイングを打席ですることが大事。こういう気持ちでいった方がいいよとか、そういうのは経験してきたので話はします。技術のことというのは、選手の感覚なので。自分の感覚というのは、聞かれたら言いますけど、あとあまりにも気になったときとか。でも基本的にはあまり言うことはしないです」と力を込める。