木嶋事件はインターネットを駆使したことが特徴だった。被害者探しも、文章で男の歓心を買うことも、理想の自分を演じることも、ネットあればこそ成し得たことだった。

 木嶋佳苗が逮捕されたのは2009年9月だった。ほぼ同時期に、鳥取県では上田美由紀が逮捕されている。上田にかけられた容疑もまた男性ふたりに睡眠薬を飲ませ、海や川で殺害したというものであった。さらに2014年には、京都で67歳の筧千佐子が逮捕された。見合い結婚した相手などを青酸化合物で殺したという容疑に問われた。

 裁判の結果、全員に死刑判決が下されている。

 三者の事件には必ずしも容姿端麗とはいえない女が次々と結婚や交際をエサに金品目的で男を騙して殺したという共通点がある、女性による凶悪犯罪の新しいかたちだ、と評されもした。

 だが、木嶋の犯罪には、ほかの二者とは異なる、大きな特徴があった。それは、インターネットの存在だ。木嶋の事件はネットを介した点で今日的だった。

 上田はスナック勤めをしており、客である男性をターゲットにした。筧は結婚相談所で紹介された男性を次々と毒牙にかけた。

 一方、木嶋が目をつけたのは、婚活用マッチングサイトだった。それだけではない。凶器はネットショッピングで買い、騙し取った金で飽食ざんまいする生活をブログで自慢げに発信し続けたのだ。

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source : 週刊文春 2024年11月21日号