「かなえキッチン」に木嶋が綴る浮ついた日常は、すべて被害者が読むことを想定して書かれていた。そしてついに起こした殺人。ブログの中身は異様な高揚感に包まれた。
木嶋佳苗は婚活用のマッチングサイトで知り合った田端輝夫(仮名)と2008年6月から交際するようになり、学費、生活費、自動車教習所の費用、家賃、ベンツの購入費……と容赦なく金をむしり取っていった。
初めから金を引き出すための「標的」として田端を見ていた。自分の経歴を「ピアノを教えながら、女子栄養大学に大学院生として通学している」と偽ったのも、学生だと称したほうが、援助をしてもらいやすいと考えたからだった。
それなのに法廷では、「田端さんとは真剣に結婚を考えていた。詐欺ではない」と言い張り、こんな説明をした。
「12月に入って、自分から田端さんには、『女子栄養大学の大学院生』だというのは嘘だと告白し、泣いて謝りました。その上で料理学校のル・コルドン・ブルーに通いたいので、その学費を出して欲しいと頼み、また、ベンツも新しいものに買い換えたいと話しました」
シルバーのベンツCクラスを購入したが、すぐにぶつけた。それは中古で愛着が湧かなかったからだと思う。ワインレッドのベンツEクラスに買い換えたい、そう話した、と。
学生ではないと聞かされ、田端はしばらく黙っていたが、すべて受け入れてくれたと、木嶋は続けた。
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source : 週刊文春 2024年11月28日号