新年あけましておめでとうございます。いつもご愛読ありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。「週刊文春」編集部も1週間ほどの休みをいただき、一昨日(1月3日)に仕事始めを迎えました。

 唐突ですが、皆さんは「コタツ記事」を読みますか。コタツ記事とはテレビ番組や雑誌が報道した内容をそのまま引用したネット記事の通称です。この年末年始にかけてもダウンタウン松本人志さんの復帰、元SMAP中居正広さんと西武ライオンズ源田壮亮選手のスキャンダル、紅白歌合戦など年末特番に関するコタツ記事がネット上で氾濫していました。

マスコミの人間がぶつかる「壁」

 私自身、このところスマホが手放せない。昨年12月に電子版編集長に就いてからは、コタツ記事の閲覧も仕事の1つとなり、ますますその中毒ぶりに拍車がかかっています。空いた時間があれば気になった記事に飛びつき、次から次へと関連記事にループ、気付けば1時間近く経っていることも少なくありません。

 そこで、正月休みだけはデジタルデトックスを試みようと、手に取ったのが「なぜならそれは言葉にできるから」(カロリン・エムケ著・浅井晶子訳、みすず書房)です。

 著者は、ドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」や新聞「ディー・ツァイト」の記者をつとめたジャーナリスト。世界中の戦地、難民キャンプ、刑務所などでの取材経験をもとに、「証言すること」「証言を聞くこと」「証言を伝えること」とはどういうことなのか。マスコミの人間であれば誰しもぶつかる壁について真正面から向き合っています。

 この本を手に取ったのは、2024年の新年特大号で掲載したダウンタウン松本さんの記事がきっかけです。大きな反響を呼んだスクープでしたが、同時に報道した内容について疑問や批判がなされました。

 担当デスクの私、法務部の担当者を加えた取材チームは、証言者の女性と毎月のように集まり、記事の意義について何度も話し合いました。「密室における性的行為を克明に記すのは女性への2次被害にあたるのでは?」との意見もありました。刑事事件で時効の案件を報じる意義はどこにある? 「SEX上納システム」のタイトルは露骨すぎないか? こんなテーマを毎回、社内の会議室で議論し、時には3時間以上費やすこともありました。

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source : 週刊文春