「ファンあってのプロ野球」――“ミスタープロ野球”と呼ばれた長嶋茂雄(現巨人軍終身名誉監督)が、現役時代からよく語っていたフレーズである。選手として魅せるプレーを意識し、監督となってからも事あるごとにファン目線でのプロ野球のあり方を説いたミスター。その背景にあったのはファンの存在こそがプロ野球人気の土台を支えているという当たり前の思いだった。
しかし昨今のプロ野球界は、そんな「ファンあって」とは思えない出来事が頻発しているのが気になるところだ。

“フジ取材証没収”が問題視された理由
日本野球機構(NPB)が、昨年の日本シリーズでフジテレビの取材証を没収したことに、公正取引委員会(公取委)が独占禁止法違反の疑いで調査に乗り出したという報道が流れた。実はこれも野球ファンのニーズではなく、直接的な利害関係のあるスポンサーなどへの配慮が優先された結果の出来事だったのである。

事の発端は昨年10月26日に行われた日本シリーズ第1戦の生中継と同時間帯に、フジテレビが早朝に行われたロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が出場する米大リーグ・ワールドシリーズ(WS)のダイジェスト放送をぶつけたことだった。NPBは「信頼関係が著しく毀損された」として、以降の日本シリーズのフジテレビの取材パスを没収。その後に行われた日本代表「侍ジャパン」の強化試合の取材証の発行も行わなかった。
公取委はこのNPBの行為を放送各局と米大リーグ機構(MLB)の公正な取引に圧力をかける「取引妨害」の可能性があるとして、行政指導などの措置を検討しているという。

「一番の問題は取材証の没収は報道の自由を犯す可能性があることです。これが許されれば、自分たちに都合の悪い報道にも『信頼関係の毀損』を理由に取材証没収が可能になってしまう。安易に取材する権利を取り上げる行為は看過できない。また今回の出来事の背景には、ファンより日本シリーズ協賛企業や中継スポンサーへの忖度を優先したという事実があった」
こう語るのはある球界関係者だ。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル