この原稿が掲載される頃には、注目のフジ・メディア・ホールディングスの定時株主総会は終わっているだろう。株価はこの1年で約2倍になっているとはいえ、大株主と対立したまま株主総会を迎えるフジテレビの清水賢治社長は、さぞや気が重かったと思う。騒動から急転直下の人事だったわけだが、逆に、ここまで話題を集めると開き直れるのだろうか。

 私は上場企業の社長歴25年。これまで25回以上、株主総会の議長を務めてきた。最初の頃は入念なリハーサルもやっていた。本番よりも意地悪な質問に答える練習をみんなの前でやらされて、社内のメンバーにしどろもどろになる姿を見られたりもした。株主総会当日は、裏方が入念な議事進行シナリオを作ってくれ、分厚い想定問答集が用意され、バックヤードにはいつも有事に備えて弁護士がスタンバイしている。そんな物々しい雰囲気の中で、「只今、緊急動議が提出されました」とか「議事進行の妨げになりますので退出を命じます!」とか、そんな普段は言い慣れない言葉を発するなんて、考えただけでドキドキする。平和に進行し、終わるのが一番だ。

 だけど、今回のフジHDの株主総会はそうはいかないだろう。事前からプロキシーファイトの様相を呈している。特に大株主と対立しているのが、取締役選任に関する議案についてだ。

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source : 週刊文春 2025年7月3日号