毎年のように俳優やラッパーなどのアーティストがドラッグをめぐって逮捕されていく芸能界。一体、何が起きているのか。長年、薬物取材を手がけてきた「週刊文春」エース記者が紐解く芸能界の薬物汚染の実態。case.7は人気音楽グループのメンバーH。(初回は#1へ)
小さな飲み屋が犇めき合う三軒茶屋の通称「三角地帯」。路地裏を通過し、数分進むと、低層マンションに囲まれた静かな住宅街が眼前に広がる。地域の治安を守る世田谷警察署の周辺には、幼稚園や保育園が点在し、夕暮れ前には学習塾に子供を通わせる品の良い親たちが忙しなく行き交っている。
都内最大のドラッグ密売所
2019年、「週刊文春」記者はある一軒家を見渡せる物陰に潜み、次々と訪れる人々を観察し続けていた。「三角地帯」を闊歩する刺青の入ったミュージシャン系の男性や水商売風の女性ばかりではない。美容師やアパレル店員のような若者に交じり、スーツ姿のサラリーマン風の男性も吸い込まれて行く。来訪者は、多い日で20人を超える。多種多様な老若男女が時間差で一軒家に入っていき、ものの数分で退出するという不思議な現象が日々繰り返されていた。「週刊文春」記者がこの一軒家を定点観測し、出入りする関係者を記録するに至ったのは、一つのきっかけがあった。
都内最大のドラッグ密売所、通称「世田谷ハウス」――。
この一軒家は、一部のドラッグ愛好家からそのように称されていた。奥まった住宅街に佇む白壁の3階建ての邸宅。所有者は都内に複数の不動産を所有する資産家夫婦だが、いつしか安藤辰信(仮名)が借り上げ、弟と2人で暮らしていた。
「安藤さんには2つの顔がある。表向きは化粧品販売会社の社長ですが、裏の顔は密売所のオーナー。彼ら『安藤兄弟』は神奈川県内の不良筋などから純度の高いコカインを大量に仕入れ、密売所で小分けして販売している。『関東一円で一番良質のコカインを安価で提供してくれる』と評判でした。当然ながら一見さんはお断りで常連客にしか売らないけど(顧客数は)200人は下らないでしょう」(安藤の知人)
安藤は“自社ブランド”のコカインと大麻の在庫が切れると、愛車のポルシェ「911Carrera」を駆り、買い出しに出掛けるという。そして、周囲にはこう豪語していた。
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source : 週刊文春