ウランバートルの街を一望するダンバダルジャーの丘。静謐な空間に、地面を叩く雨音だけが響く。天皇皇后が日本人抑留者の慰霊碑に黙祷を捧げると、帰り際、ふいに雨が止んだ。

 

「もう1度、1礼しましょうか」

 

 雅子さまの呼びかけで傘を預けたお2人は再び、深々と拝礼されるのだった。

 7月8日午後。日本から駆け付け、その光景を見守っていた抑留者遺族の鈴木富佐江さん(88)が、万感の思いを口にする。

「朝から音を立てて降っていた雨が、あの時、急に止んだのです。両陛下がもう1度、慰霊碑に拝礼されるお姿を見て、奇跡というものがあるんだと思いました」

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source : 週刊文春 2025年7月24日号