「この番組はフィクションです」
そんな見慣れたテロップが大きな意味を持つジャンルがある。フェイクドキュメンタリーだ。基本的にドキュメンタリーを模してつくられているため、一見するとリアルなのかフェイクなのかわからない。その真偽や境界を楽しむものだからだ。従ってテロップも「この番組の一部はフィクションです」のように含みをもたせるなど工夫されている。昨今、そうしたフェイクドキュメンタリー的ホラーが人気だ。『このテープもってないですか?』(テレビ東京)などの大森時生、人気ホラー系YouTubeチャンネル「ゾゾゾ」の皆口大地、その皆口とともに「フェイクドキュメンタリー『Q』」を手がけている寺内康太郎、映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』などの近藤亮太という、いわばそのジャンルのオールスターが集結して制作されているのが『TXQ FICTION』だ。本シリーズの特徴のひとつが「この番組はフィクションです」というテロップを冒頭にハッキリ出し、「フィクション」であることを明示していることだ。

「イシナガキクエを探しています」、「飯沼一家に謝罪します」に続く第3弾は「魔法少女山田」。取材ディレクターが「唄うと死ぬ歌」という謎の曲を知ったことから物語が始まる。それまでの様々な番組を模したつくりに比べると、心霊系ドキュメンタリーのオーソドックスなスタイルだ。ディレクターは初めてその曲を聴いたはずなのに、なぜか覚えているという。
そこから、この曲にまつわるものとして『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)的な番組(そういえば、“本家”でもよく見ると怖い都市伝説化した回がいくつかあった。探偵ならぬシンパイ刑事役にはトム・ブラウン。いかにも、かつ、ホラーに似合う人選)や『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)っぽいドキュメンタリー映画『魔法少女おじさん』が紹介され、この曲がつくられた経緯が次第に明らかになっていく。
とにかく終始不穏で(そこはかとない可笑しみもあって)引き込まれる。いまや、どこまでがリアルかフェイクかの真偽で面白がるフェーズは終わったのだろう。フェイクドキュメンタリーの場合、どうしてもその仕掛けにフォーカスされてしまいがちだ。それよりも最初から「フィクション」を謳った上で、あくまでも手法としてフェイクドキュメンタリー的な演出をもちいて、純粋に物語の面白さで勝負するんだという強い意志を感じる。
この番組を見たあと、「逃げちゃダメだよ~負けちゃダメだよ~♪」というフレーズが頭にこびりついて離れない。あれ、この曲、僕も知っていたかも……、と思うのは気のせいか。
『TXQ FICTION』
テレビ東京 不定期放送
https://www.tv-tokyo.co.jp/txqfiction/
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source : 週刊文春 2025年8月7日号






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