最終回まで残り1カ月を切った朝ドラ『あんぱん』。漫画家やなせたかしとその妻・暢(のぶ)をモデルにした「愛と勇気」の物語はどのように生まれたか、そしてこれからどんなラストに向かって行くのか――。脚本を手掛けた中園ミホ氏(66)が「週刊文春」に明かした。

 よく、「お産は一人目よりも二人目のほうが、先の痛みやつらさを知っている分、大変」と言いますよね。私は今回が二度目の朝ドラなので、かなり覚悟していたんです。最初の頃は、「こんなものじゃない、これからもっとキツくなるぞ」と身構えていたのですが、11年前、『花子とアン』の時は週6日だった放送が働き方改革で週5日になったこともあり、恐れていたほどではなかったですね。とはいえ、執筆中は分刻みでスケジュールが決まっているような状態だったので、やっぱり大変でした。7月末に脱稿したのですが、真っ先にそれまで控えていたお酒を解禁。くらばあを演じた浅田美代子さんと心ゆくまで飲んで、しっかり2日酔いになりました(笑)。

中園ミホさん ©︎文藝春秋

 けれどもいざ終わってみると、まだまだ書きたいエピソードがたくさんあるんです。というのも、構想はあったものの、スケジュールの関係で実現できなかったシーンが結構、あったんですね。本当だったらそうしたエピソードはスピンオフでやらせていただけるとありがたいのですが、やっぱり皆さんお忙しい方ばかりなので……。

 今でこそそんなことを言っていますが、実は、今回朝ドラのお話をいただいた時は、お断りするつもりだったんです。前回が本当に大変だったので、「もう無理!」と(笑)。断るつもりで、ドラマ部長とプロデューサーにお会いしたのですが、「誰か書きたい人はいますか?」と聞かれた時に、ふとやなせたかしさんが思い浮かんだんです。昔ボツになっていたので、ダメ元で言ってみたのですが、プロデューサーが、「僕も気になっていたんです」と、やなせさんの本を鞄から取り出した。何か運命的なものを感じましたね。

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source : 週刊文春 2025年9月11日号