「エストロゲンが減少し、(おん)()日傘を失った女性は嵐の中に放り出される」。女性外来の第一人者で更年期サバイバーの天野惠子医師は、凄絶な更年期をこう喩える。健康の秋、辛い症状を和らげ、健やかな高齢期の準備をしよう。

「のぼせや倦怠感、冷えや不眠といった多様な更年期症状は、女性ホルモンの変動により自律神経が乱れることで生じます。昼夜の寒暖差や台風など、自律神経に影響を与える因子が重なる秋は特に、症状がひどくなりやすいのです。不調を漫然と我慢するのではなく適切に対処して、健やかな老年期に向けた準備を始めましょう」

 こう力説するのは、内科医の天野惠子氏。女性の健康問題に対応する女性外来を全国に広めた「性差医療」の第一人者だ。著書『81歳、現役女医の転ばぬ先の知恵』(世界文化社)は3万部のヒット。82歳となった現在も静風荘病院(埼玉県)の女性外来担当として週2回診療にあたる。

「老後の対策は何歳から始めても遅過ぎることはない」と天野氏

「20年前、性差に基づく女性医療の立ち上げに取り組んだきっかけは、私自身が凄絶な更年期障害を体験したことでした。48歳から59歳までの約10年にもわたり、激烈な症状に悩まされ続けたのです」

 医師として働く傍ら、28歳、30歳、37歳で出産を経験した天野氏。

 

「40の声を聞いた頃から免疫の低下を感じ、よく風邪を引くようになりました。40代後半には、夜用ナプキンでも間に合わないほどの大量出血と貧血に悩まされ、『機能性出血』と診断されました。50歳では、子宮筋腫が尿道を圧迫する排尿障害に。子宮を全摘し、卵巣がん予防のため両側の卵巣も摘出しました」

 これで不調から解放される――そう思ったのも束の間だった。

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source : 週刊文春 2025年10月2日号