サッチャー元首相にお会いしたことがある。

 それも単にちらっと挨拶した、ということではない。一緒のシンポジウムに出席したのである。

 どうしてそんなことになったかというと、私も詳しいことは知らないのであるが、来日したサッチャーさんに半日の空きが出た。その時間がもったいないというので、某大手エンタメ会社に話が持ち込まれた。依頼を受けてシンポジウムを仕切ったのが私の友人で、4人くらいの日本側メンバーの一人として舞台にあがったのだ。

 なぜ私が?と今でも思うが、当時は今のように、頭も喋りもキレッキレの女性論客がまだそんなにいなかった。“にぎやかし”として私が名指しされたということらしい。

 サッチャーさんが首相を退任された後だったので、1992年のことだと思う。そのシンポジウムであるが、サッチャーさんが一人でお話しになった。通訳も入るから時間がかかり、講演会とかわりない。それでもメンバーひとりひとり最後に感想を言った。私は、

「いろいろ質問したいこともありましたが、こういう方に女性として、と聞くのはとても失礼なことだとわかりました」

 とか何とか言い、なぜかわりと大きな拍手がきた。それがサッチャーさんとの思い出。この時ツーショットの写真も撮ってもらったのだが、どこかへいってしまった。まことに残念だ。

 このたびわが国の総理大臣となった、高市早苗さんは、このサッチャーさんが憧れの人ということである。どんなことをしても、自分の信念を貫く、というところに惹かれるのかもしれない。

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source : 週刊文春 2025年11月13日号