11月1日(土)

 静岡県焼津市にて独演会。せっかくなので焼津に縁のある人に同行してもらおう。来春、雷門五郎を襲名し真打昇進予定の雷門音助さん(藤枝市出身元某信用金庫焼津支店勤務)と、実録漫談芸人のコラアゲンはいごうまん兄さん(長いので以下、コラ兄さん)。地方の1000人規模の落語会としては斬新な顔ぶれだ。コラ兄さんは焼津で長く単独ライブを続けていて根強いファンがいるらしい。芸歴36年のコラ兄「初めてグリーン車乗ったわ!!」とモーレツに嬉しそう。会館の敷地内に焼津小泉八雲記念館なるモノがあったので開場前に覗いてみた。朝ドラ「ばけばけ」効果か大量のおばさんで溢れかえる館内。だが皆手には私の独演会のチラシを握っている。開場前の暇つぶしか。でも誰も私に声などかけない。「剥き身」なのに。トイレの場所さえ聞かれる始末。まさにジゴク(ヘブン先生口癖)! パンフによると八雲先生は生涯のうち6回焼津を訪れたそうだ。焼津滞在中の東京にいる奥さんとの往復書簡が展示してある。LINEの晒し上げみたいだが、その中身は可愛い。「ばけばけ」にも焼津は出てくるかな。肝心の独演会はゲストのコラ兄の独壇場。スタッフさんもみな旧知の方で、お客様も温かい。もちろん初めてのお客のハートもコラ兄さんの汗みどろの掌で鷲掴み。私もあと5回焼津に行けば記念館が建つだろうか。

11月3日(月・祝)

 昨日から毎年恒例の博多・天神落語まつりで博多で朝を迎える。昨日の打ち上げで二日酔い。ホテルで「ばけばけ」を観てると大学の友人から「H先輩が昨日亡くなった」とLINE。享年50。日芸軽音楽部の2つ上の先輩で、落研1年の私を「気の毒にな〜、友達いないんだろ〜」と19の頃から可愛がってくれた。会えばずっと下ネタ。乾いた口調で自嘲気味に最近の下半身事情を聞かせてくれる。去年から患っていて、今年の正月に退院祝いをしたらそのお返しに、「何かあったらコレ使ってくれ」と“モフモフのついた手錠”をくれた、小粋な変態Hさん。小さいお子さんもいるのに(変態だが)早々に逝ってしまった。あの手錠でHさんを繋いでおけばよかったよ。昼、そうば改め桂惣兵衛襲名披露。夜、王楽改め七代目三遊亭円楽襲名披露。口上もつとめる。

11月4〜6日(火〜木)

 金曜日からのネタ下ろし独演会「落語一之輔春秋三夜」に向け、寄席は出ながらも落ち着かない3日間。喉の調子がイマイチなので禁酒。喉以外はすこぶる体調が良い。あとはネタだけなんだがな。

11月7日(金)

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source : 週刊文春 2025年12月18日号