亀和田さんも書いていたように『ばけばけ』の髙石あかりはすごい。最初に見た時に「おばけだ!」と思いましたもん。iPhoneで「おばけ」って打って出てくる絵文字にそっくり。この子がのちに怪談を語り出すというだけで『ばけばけ』の成功は決まったようなものだと思いましたが。
私にはまだわからないのです、ヘブン先生が。
NHKには『日本の面影』という、小泉八雲とセツ夫妻のドラマがあった(1984年。41年前だ)。これは私の「オールタイムテレビドラマベスト3」にずっと入り続けているドラマでして、それと比べてしまうのはあまりにも分が悪いと思うが、『日本の面影』のハーンは「異人さんの異物感」や「彼の境遇から来るやや変わった性格」と「そんなハーンを好きにならずにはいられない人間的魅力」を実に自然に表現していたのが忘れられんのですよ。ま、脚本が山田太一(!)で、演ずるはジョージ・チャキリス(!!)という、乗ってる舞台がちがうというか、ほんと、比べるもんじゃないんだが。

で、『ばけばけ』のヘブン先生は、登場した時から「ヘンなガイジン」そのもので、そりゃ当時の日本の、それも山陰島根の人から見れば西洋人など怪物みたいなものだろうから、最初はそれを強調して、「なにこのヘブンて男、コイツ嫌い」から、だんだん「なんかこの人……気になる?」へと移行して気がついたらもうヘブン先生に夢中、みんなヘブン先生大好き、という流れのはず。
そのつもりで見ているのだが、いつまでたってもヘブン先生はよくわからない、あまり好感を抱けない人なのだ……。やっと働き出したのはいいとして、依然として何考えてんのかよくわかんないし、いつまで糸コンニャク怖がってんだだし、そこで怒鳴るか?ってとこで怒鳴ってるし、たまにはいい人になることもあるが、そのタイミングがチグハグなので「何かまた些細なことで怒り出すのでは」とぜんぜん安心できない。
ヘブン先生はいつ魅力全開になるのか。私の『ばけばけ』の興味はその一点になってしまっている。それとも最後までこの調子だったらどうしよう。
あと、主題歌を聞くたびに「これ、男のほうはヘブン先生が歌っている」としか聞こえなくて、紅白歌合戦に、浴衣の襟元を乱したヘブン先生が出てきてあれを歌ってくれるという景色が思い浮かび、そうなった時にはもう日本中はヘブン先生のトリコになっているのかもしれない……などとありそうもないことを想像するぐらい、今のところヘブン先生がわからない。小泉八雲とはそういう人だったんだ……という新機軸のはずはないだろうし、いつか変わる。その瞬間をぜったい見逃したくない。
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source : 週刊文春 2025年12月18日号






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