先日、TBS「ラヴィット!」を見ていたら、「女性心をくすぐるグッズ」というフレーズが登場した。そこは「女心」じゃないのか。ジョセイゴコロという響き、とても違和感。

 日頃使われる言葉を観察するとき、結局私はXの検索をよく使う。「女性心をくすぐる」というフレーズは10年以上前からあるにはあるが今に至るまで使用例が少なく、増えてきた様子もない。圧倒的に「女心をくすぐる」が優勢。

 私はこの連載で、実は去年も、芸人が最近よく言う「女性」という言葉をネタにしている。「若手男性芸人は(略)例えば『昨日合コンに来た女性がさぁ』なんて言う。文脈的には『女』とか『女の子』のほうがむしろ自然なところを、ことごとく『女性』と言う」と。そして、「単語には気を遣うわりに、女を露骨に性的に見ることを笑いにするネタを変わらずにしてしまっている」。要は、彼らは「女」を「女性」と言い換えなきゃいけないと機械的に考えているのだ。この奇妙な傾向はさらに進み、バラエティ番組では熟語内の「女」まで「女性」に変わりはじめてきたわけだ。

 もしかして「女性心と秋の空」なんて書く人もいるかも、と検索してみると、わずかながらマジで存在する。ほかにも「女」を使った慣用句は……と辞書を見ると、考えてみれば「秋の空」を含め、こういったものは基本的に偏見たっぷりに女を決めつける、今じゃ使えないような言葉ばかり(もちろん「男」を使った慣用句も同様だが、数は圧倒的に「女」が多い)。「女」を「女性」と言い換えた程度でどうにかなるもんじゃなかった。

 また、「女心をくすぐる」で検索すると恋愛関係の記事が多く登場し、「女性心をくすぐる」だとアクセサリーなどの記事が増える、というおもしろい傾向も発見できた。なるほど、「女心」を知りたい男が見るサイトの言葉は「女心」でいいが、女が見るショッピングのサイトは少し気を遣って「女性心」と言い換えているわけだ。使い分けに意味が生まれつつある。

「女」→「女性」の言い換えは、女性を常に性的に見たり侮蔑的に語ったりするのはもうやめよう、例えば乱暴に「女」と呼ぶのもやめよう、というのが本来的な理由だと思う。だから「女性」と呼んだところで捉え方が同じなら意味がないし、逆にその背景が分かっていれば「女芸人」などと呼んだって別にいいはず。

 つまりこれって捉え方や偏見の問題なのに、とにかく「女」と呼ぶのが失礼、言葉さえ変えればOK……って考えがいよいよ定着しつつあるなあ。安易すぎてとても嫌な傾向だよ。

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source : 週刊文春 2025年12月25日号