日曜日の深夜。寝そびれたり、ふと真夜中に目覚めたとき、『そこ曲がったら、櫻坂?』をぼんやり眺める。アイドルには無知だし興味もない私を、どこか惹きつけるものがあるのか。俗に坂道グループと呼ばれる乃木坂、日向坂と比べたとき、櫻坂46の女の子たちはやや落ち着きがあり、トークも自然体に映る。

二十歳前後のアイドルが年相応の、しかし大げさではない笑みを浮かべているなかで、異彩を放つメンバーがいた。金髪もしくは脱色した髪で常に無表情。たった一人の金髪で、不機嫌そうな顔のアイドル、それが藤吉夏鈴だ。
彼女を知ったのは、約二年前にNHKが放映した『作りたい女と食べたい女シーズン2』だ。比嘉愛未と西野恵未が、食べることを通して、ゆっくり友情と愛情を育む佳作だった。
藤吉は二人が住むマンションの隣室に越してきた女性を演じた。二人とは違って少食だし、他人と一緒に食事できない会食恐怖だ。メインの二人の明るさとは対照的な彼女がオドオド戸惑いながら接するうちにいい味が劇中に生まれた。二人の女性が抱える希望と困難をすぐに察知し、暖かく見守る立場にまでなる。
地味だけど、いい若手女優だなという印象を抱いた。半年後に彼女はいきなり映画初出演作『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』で主役に起用される。高校新聞部の正義感の強い部長役は、『ベビわる』で一気に台頭した髙石あかりだ。その髙石が二番手になり、新人の藤吉を守りたてる。地味で機転の利かない女子高生が少しずつ成長する姿がいいんだよ。
彼女が坂道グループの一員と知り、テレ東深夜を観たらビックリ。一人だけ金髪で、ニコリともしないんだから。しかし圧倒的な存在感があった。
櫻坂の女の子たち、みんな感じはいいんだよ。でもなんだろう、ちょっと高級なガールズバーの接客みたいな気がしてね。
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source : 週刊文春 2026年1月1日・8日号






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