ツチヤ本の理解者が現れた! 「この本で救われた。読んでほしい」と訴える者がわたし以外にいるとは思わなかった。それが高校生だとは夢にも思わなかった。

 全国高校ビブリオバトルが開かれ、750校が参加した。この大会は、読んでほしい本を1人ずつ紹介し、質疑応答の後、それを聞いて読んでみたいと思った人の数を競う大会である。

 優勝したのは、青森県立八戸東高校の前田詩歩さんである。彼女が推薦した本が、驚くなかれ、拙著『記憶にありません。記憶力もありません。』だったのだ。

 わたしも思わず買おうとしたほどの説得力だった。やはり澄んだ目には真の価値が見えるのだ(わたしの目は澄んでいないので断言はできないが)。わたしを軽視してきた者は悔い改めてほしい。澄んだ目も無垢の心も無理だろうが、せめて1人10冊は買ってもらいたい心境である。

 わたしの本は長年、読むとヒネクレた人間になると言われ(ヒネクレた連中がツチヤ本のせいにしたのである)、わたし自身、謙虚すぎるあまり、こういった流言飛語につい流され、ツチヤ本は未発達の年齢層には有害かもしれないと思って3歳以下には販売禁止にしたほどだ。

 この高校生の優勝はわたしには奇跡に思える。

 高校生といえば、年長者に反発する年ごろだ。わたし自身、高校生のころは大人にはことごとく反発していた。大人はみんな間違っているか、愚かだと思っていた。このころのことをマーク・トウェインはわたしの大好きな表現で語った。

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source : 週刊文春 2026年3月5日号