入院した。書くのは簡単だが、実際は大変だった。
入院日は分かっていたので、入院までに週刊文春の原稿を2、3本書き溜めておこうと思っていたが、一文字も書けないまま入院前夜を迎えてしまった。ギリギリだ。いつも通りである。サボったわけではない。必死に考えたが、何も出てこないのだ。いつもそうだ。
原稿執筆と並行して、入院までに風呂の掃除をする。前から掃除しておかなくてはと思っていたが、これも先延ばしにして、この日に至ったのだ。かすかな悪臭がただよってきたので、浴槽と給湯器をつなぐパイプの掃除が必要なのだ。このまま1週間以上入院して放置したら、悪臭は我慢できなくなる。原稿を書きながら、浴槽に薬剤を入れたり、水を抜いたりしながら合計8時間はかかった。その間、原稿を書き続けた。
合間を縫って入院の準備を進める。必要なものをキャリーバッグに入れていく。入院のたびにリストを作っておけばよかったと反省するのだが、いつもサボってしまう。そのため、必ず何かを忘れるが、いまは反省している暇がない。行き当たりばったりでバッグに詰める。土壇場で後悔と反省ばかりだ。後悔と反省をする時間がなくてよかった。
その間、やっとの思いで原稿を1本書き終える。その後、同じ老人ホームに入居している人にお見舞いをいただいたお礼の手紙を書く。やっとの思いでそこまでやると、もうほとんど寝る時間がない。20分ほどベッドで横になって、一睡もしないで起きる。
パンを食べ、バッグを引いて玄関に行くと、廊下に点々と黒い物体が落ちている。調べてみると、バッグの車輪の一つが割れてバラバラになっている。不吉だ。
タクシーで病院に行き、入院手続きをして血液などの検査を受ける。動揺と焦りがずっと続いていたためか、体温は37度、血圧が180ほどになっている。
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source : 週刊文春 2026年3月26日号






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