結局「最後までちゃんと見た」朝ドラは『虎に翼』だけだ……。『ばけばけ』はあまりの話の進まなさに挫折した。ヘブン先生には未だに魅力を感じないし。

 そんな今、『虎つば』のスピンオフドラマが放映された。『山田轟法律事務所』です。あの「男装の弁護士・山田よね」が主人公。よねさん人気あったもんね。

 私はずーっと「どんなに人気があっても(人気があればあるほど)スピンオフはやめとけ」と言っている。スピンオフドラマって「脇役にも脇役の人生がある。人間はすべて素晴らしい」という思想、つまり『世界に一つだけの花』精神である。別に悪いことじゃないですが、結局はそれは「感動のインフレ」を引き起こし、感動に飽きて主役にも脇役にも何も感じない、人間がただのコマになる、という結末が来るのだ。それ以前に、スピンオフドラマって、本編より面白かったためしがない。ほぼ蛇足。作者とファンの自己満足のワチャワチャドラマ見せられるからウンザリ。

 という色眼鏡バリバリで見た『山田轟法律事務所』。思っていたようなものではなかった。これは『虎に翼』のスピンオフではなく『虎に翼』の本編ではないか。

 不思議なぐらい「よねという人の、今まで見えなかったドラマ」は、ない(エピソードなら出てくる)。

©graphica/イメージマート

『山田轟法律事務所』に溢れんばかりに出てくるのは「『虎に翼』本編で、作家が書ききれなかったこと」。

 在日朝鮮人、戦中から戦後に至るまで続いた「慰安婦たち」、被差別部落民、浮浪児やパンパン。そちらのほうが主役なのではないかと思った。

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source : 週刊文春 2026年4月9日号