現代アートの旗手として、熱い支持を集める沖潤子さん。
時間と物語が重なり合う膨大な針目に身を委ねよう。

 

撮影 沖潤子 榎本麻美(ポートレート)

 

 古布の上に広がるおびただしい針目。刺繍アーティスト・沖潤子さんの手による圧倒的な密度の作品群は、他に類を見ない生命力を宿している。初作品集『PUNK』は、刊行から12年経つ今なお版を重ねる異例のロングセラーに。続く作品集『STILL PUNK』(ともに文藝春秋刊)がこの度発売された。「作品のクチュリエ」だという猫との日々や国内外の個展で発表された作品が網羅されている。

 
 
 

 沖さんは昨年、世界最大級の現代アートフェア「アート・バーゼル」にも出展。70年前に自身の母が仕立てた兄用のベビー服に針目を加え、メイン作品として展示した。すると芸術という芸術に触れてきた各国の美術関係者達が口々に「ナラティブ!(作家自身の物語を感じる)」と驚嘆した。

 

「私の制作の根源には母や祖母の存在があって、個人的な物語性と作品とは切っても切り離せません。暑苦しいかなと考え込んでしまったこともありましたが、今は背景に浪花節があることこそが上等だ! と思っています」

 紙面を埋め尽くす針目が、ページをめくる者それぞれの物語をかきたてる。

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source : 週刊文春 2026年4月16日号