「急に始まる」と言われる介護。親が脳血管疾患や骨折・転倒で入院した、認知症の兆候が出た……そうなったらまず、誰に、何を相談するべきか。未経験者のための“介護入門”後編ではスタート時の流れを徹底解説する(前編はこちら)。

 

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 よく「介護は急に始まる」と言われる。しかし、スタートするに至る要因は、もちろん存在する。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(2022年)によると、介護が必要となった主な原因の1位が認知症で16.6%。2位が脳血管疾患(脳卒中)で16.1%、3位が骨折・転倒で13.9%。これらが、“3大要因”である。

これが介護の3大要因

 元おニャン子クラブのメンバーの新田恵利氏(58)は、2014年から、当時85歳だった母を6年半介護して看取った。いまはその経験を活かし、淑徳大学総合福祉学部で客員教授を務めているが、介護がスタートした要因は、骨折だったという。

新田氏

「母は骨粗しょう症で何度か骨折を繰り返していたものの、犬の散歩も出来て元気でした。しかし、14年9月、腰痛を訴えて入院します。腰椎の圧迫骨折でした。約3週間の入院で足腰の筋肉が弱ってしまい、退院時にタクシーに乗ろうとしたのですが、車いすから立てなかったのです」

 自力歩行が難しくなり、常時介護を必要とする要介護4に認定された。

「青天の霹靂でした。身内に介護を経験した人もおらず、何をしたらいいのかわからなかった。母に聞いたら、家で過ごしたいというので、出来るだけ家で看ようと決心。私と独身の兄で同居して、交代で日常の介護を分担しました」(同前)

 以来、行政の支援も受けつつ、6年半にわたり、自宅で介護を続けた新田氏。リハビリを経て、一時は要介護3(日常生活全般に介護が必要。介助があれば歩行もできる)に回復した。

長年、母を介護した新田氏

「歩くことは出来ませんでしたが、食事や留守番も1人で出来ましたし、認知症の進行も緩やかで、徘徊もありませんでした。最後まで私たちを認識することもできました。振り返ってみると、大変だったのは、介護が始まった当初のことです。しばらくして、我々がすべきことが明確になってからは、落ち着いて目の前のことに取り組めました」(同前)

 厚生労働省の調査では、80〜84歳の約26%、85歳以上は約60%が要支援・要介護認定を受けるという。誰しもに訪れ得るものと言っていいだろう。介護期間はもちろん人によって様々だが、平均すると、4年7カ月ほどになる(公益財団法人生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」)。ただ、新田氏が語るように、始まってからしばらく経つと、介護に慣れてくるケースも多いという。重要なのは、初期段階での対応で、しっかりと道筋をつけることだ。

 では、親が突然倒れた時、いったいどうすればよいのか。「後編」では、40〜50代の介護未経験者のために、実際に介護がスタートする際の流れを解説したい。

(1)退院後は4つの選択肢が

 突然の介護を余儀なくされるのは、認知症よりも、脳卒中や、骨折・転倒などで親が入院したときの方が多い。両親ともに健在で片方が発見したのか、1人暮らしで近所の人が発見したのか、自分で救急車を呼んだのかなど、様々なパターンがあり得るが、いずれにせよ、子供たちへの第一報は、病院からになるケースが多い。

 脳卒中や心筋梗塞などの場合、まずは介護云々より、命が助かるかどうかが最優先事項となる。医療ジャーナリストで介護福祉士でもある福原麻希氏が語る。

「意識があるかどうか、どれくらいの重症度なのか、すぐに駆け付けるべきかなどを確認します。手術がある場合は同意書にサインをしなければならない場合もあります。親元から離れた場所にいる場合、医師と電話やオンラインで話ができるかも聞くべきでしょう」

福原氏

 無事に、24時間集中的な治療や観察が必要な急性期を脱すると、在宅復帰へ向けた、回復期に移行する。その後、退院してからの実務的な相談を、看護師や、病院の地域連携室などに所属する医療ソーシャルワーカーと行うことになる。

「医療ソーシャルワーカーは、社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格を取得している方が多く、社会生活に支障のある人への相談・援助や社会的支援を行ってくれる存在です。退院後、親の面倒をどう看ていくのかなどについて、話し合うことになります」(同前)

 退院後は、大きくわけて次の4つの選択肢がある。

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source : 週刊文春 2026年5月21日号