2019年10月、三浦春馬(享年30)は、最後の主演映画となった時代劇「天外者(てんがらもん)」の撮影で京都にいた。ある撮休日、田中光敏監督は、着物姿で何度も近くを通りすぎる三浦の姿に気がついた。


「あれ。春馬君。休みじゃないの、どうしたの」


 すると、待ってましたといわんばかりに、田中氏に説明し始めたという。


「ちょっと、このシーンが……と、脚本にある殺陣の場面の修正を、その場で演じて提案してきた。休みの日にわざわざ刀まで差して、僕に話しかけられるのを待っていたんです。真摯で、ちょっと笑っちゃうくらいに一生懸命だった」(同前)

 将来を嘱望された俳優の三浦が亡くなったのは、20年7月18日のこと。今年で七回忌を迎える。

 コロナ禍を目前に、三浦が自由に、仕事や遊びにと邁進する最後の年となったのが、死の前年の19年だ。

 この年の三浦は、ドラマや舞台、映画など7本の作品に参加。なかでも長期の準備を費やしたのが、「天外者」だった。

数々の名作を残した

 幕末・明治の実業家で「大阪財界の父」と呼ばれた、五代友厚の生涯を描いた作品だ。超売れっ子だったが、田中氏はどうしてもと、三浦に五代役をオファー。多忙で時間が合わず、クランクインは三浦に出演依頼してから数年が経った、19年の10月にずれ込んだ。

「最初は心配していました。時代劇は細かな動きにも独特の所作がありますし、劇中の殺陣も果たしてどこまでできるのか、と」(同前)

 ただ、蓋を開ければ心配は無用だった。座る、走るといった日常の動作から刀捌きまで、最初の稽古から全てが仕上がっていたのだ。幕末に関する書籍も、熟読してやってきたという。

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source : 週刊文春 2026年7月23日号