日本で最も罹患数の多いがんである「大腸がん」。その外科手術のエキスパートが上原圭医師だ。どんなに難しい手術であっても可能性を模索し続け、8月から順天堂の主任教授となる名医が、“本当の自分”を初告白する。
厚生労働省の統計によれば、日本で最も罹患数の多いがんが、大腸(直腸・結腸)がんだ。毎年、新規でこのがんと診断されるのは15万人以上。早期に適切な治療を受ければ完治が見込めるものの、部位別で見たがんによる死亡数の順位は、2024年の統計で男性の2位、女性の1位が大腸がんとなっている。
大腸がんの外科手術の領域で「トップランナー」と呼ぶべき名医がいる。
「症例を選り好みせず、どんなに難しい手術であっても、私は『できない』という選択肢をなくしたいと思っているんです」
そう語るのは、日本医科大学消化器外科の上原圭准教授(55)である。

大腸・骨盤外科のエキスパートとして知られる上原氏。得意とするのは、骨盤内で進行した直腸がんや、直腸がんなどの手術後に骨盤内で再発、転移したがんの切除手術だ。名古屋大学医学部附属病院の「大腸・骨盤外科グループ」のチーフを長年務め、23年から日本医大に移った。
日本外科学会や日本消化器外科学会の専門医・指導医も務め、メディアで“名医”と取り上げられることも多い。他院では「手術不能」と診断された大腸がんの患者が、上原氏を頼って全国から集まってくる。いわば“最後の砦”なのだ。
「正直、もう少し早く来てくれたら……と思う患者さんも多いですが、手術をしてみなければ分からないこともある。そういう時は、患者さんに『かなり分の悪い勝負かもしれないですけれど』と伝えたうえで、何とかなる可能性のある手術方法を提案しています」

外科医を「医師であると同時に職人」と考える上原氏は、難度が高く、時間のかかる手術も厭わない。直腸がんが局所再発し、骨盤内の他の臓器に広がっているような場合は、それらを全て取る「骨盤内臓全摘手術」も行う。
「大がかりな手術をするのは、私が安全で確実に施行できると判断したケースになりますが、少しでも手術をためらう患者さんには、絶対に勧めていません。手術には危険が伴いますから。もし、医師も患者さんも、リスクを負いたくなければ本当は何もしないのが一番安全なんですよ。よく言うのですが、患者さんとは“運命共同体”。患者さんが『この手術に賭けたい』と覚悟を決めたら、私は全力で応えます」
重要視しているのは、患者たちとのコミュニケーションだ。
「私は医師として、病気ではなく、病気を持った人間を見ているんです。人によってゴールは違うし、患者さんが求めるものを理解するには、家族や仕事のことなど、バックグラウンドも含めて知っておくべきだと思っています。患者さんだって信頼できる医師に診てもらいたいはず。だからこそ対話が必要なんです」
その腕が見込まれて、上原氏は8月1日から、順天堂大学医学部附属順天堂医院の、大腸・肛門外科の主任教授として赴任することが決まっている。

「大切なのは、患者さんのために何ができるかということです。医師として患者に向き合うとき、私の性別は関係ないと思っています」
そう語る上原氏。今の戸籍上の性別は女性だが、男性として生まれ育った経歴を持つ、トランスジェンダーなのである。

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source : 週刊文春 2026年8月6日号






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