「ドーンという音と一緒に凄まじい横揺れが始まった。物も壁も落ちてきて死を覚悟しました。扉が開かず、嫁さんが下敷きになったと思って……」


 氷川町に住む星田清治さん(86)は発生の瞬間をそう振り返った。妻・シゲ子さん(85)と暮らす自宅は、直下の断層によって真っ二つに割れてしまった。

 地震発生翌日29日の夜、甚大な被害を被った宇城市と氷川町、八代市は停電し、車のライトが町の惨状を露わにしていた。ひっきりなしに救急車と消防車が道路を往来する。その道路は大きく波うち、亀裂が走っている。

 冒頭の星田さんが言う。

「本当に妻を心配した。大声で呼びながら、急いで外から裏に回って、台所の勝手口を開けて……ようやく無事を確認しました」

 同じく氷川町に住む木村和浩さん(64)は地震発生時、自宅2階で畳に寝ていたという。

「いきなりですよ。徐々に揺れが大きくなるんやなくてね。初めからとんでもない。左右に身体が振り回された。さすがにもう死んだと思いましたね」

 飛び交う物で部屋は散乱し、身体が宙に浮く感覚さえあった。

 揺れが収まり窓から外の様子を窺うと、2階だったはずだが、地面が近い。1階部分が崩壊してしまったのだった。

「家の周りは砂埃がたっていて、目をこらすと隣の家も崩れていた」(同前)

ひしゃげて道路に倒れそうな家屋

 あちこちで土煙が立ちのぼり、町が崩壊していった。

 同じく氷川町の80代の夫婦は倒壊した自宅の下敷きになった。孫の助けで女性だけは助け出されたが、男性の救出は困難を極めた。

「消防隊や警察が来て夜通し救出活動をやっていました。消防隊が声をかけてるんです。『頑張れ!』って、ずっと聞こえました」(近隣住民)

 別の近隣住民は瓦礫から出られない男性と言葉を交わしていた。

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source : 週刊文春 2026年8月13日・20日号