今年100歳になった石井ふく子は、世界最高齢の現役プロデューサーだ。伝説的なドラマプロデューサーが存命であるだけでなく、いまだ「現役」であることが何よりもスゴい。そんな彼女のドラマ人生を追った『石井ふく子100歳~心のドラマの軌跡~』が『ドキュメンタリー「解放区」』(TBS)で放送された。
石井ふく子ほどの名匠を取り上げるなら、手掛けたドラマの名場面を流し、本人や関係者のインタビューを挿入すれば、それだけで見応えのある作品ができるだろう。けれど、本作はそれとはまったく味わいが違っていた。ドラマの映像はほぼ使われず、基本は静止画のみ。さらに現在のインタビューだけではなく、1992年(66歳)や2002年(76歳)といった過去の映像を巧みにつなぎ、まるで途切れなく話しているかのように編集されている。そこで浮き彫りになるのは、驚くほど発言の軸が変わっていないという事実だ。

演出を務めたのは、佐井大紀。1967年のドキュメンタリー『日の丸』をリブートした『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』が大きな話題を呼んだドキュメンタリー作家でありながら、“本職”は『終のひと』などを生むドラマプロデューサー。その傍ら寺山修司や実相寺昭雄を特集した「TBSレトロスペクティブ映画祭」をプロデュース。本作は3年目の同映画祭のために制作された映像に、映画祭の模様などを加えて再編集したテレビ版だ。ドラマ・ドキュメンタリー双方に精通した彼以上に、本作の監督の適任者はいないだろう。しかも彼は新人時代、2018年放送の単発特番『渡る世間は鬼ばかり』のADとして、石井ふく子の現場を直接経験しているのだ。
大物俳優の義父や「親友」だったという美空ひばり、大空眞弓らとの関係を語った部分もとても興味深かったが、やはり何と言っても名コンビ・橋田壽賀子との、そのままドラマ(それもドタバタコメディ)になるんじゃないかというやり取りがいちいち面白い。駆け出し時代に少しでも目立つように台本に赤いリボンをつけたという橋田には「中身の問題よ」とバッサリ切り捨てたとか、珍しく橋田が締め切りに遅れたと思ったら恋をしていて、そのキューピッド役をやったとか、思わず笑ってしまうエピソードの連続。橋田から台本をもらうときは「ラブレターをいただいている感じ」と石井が言えば、橋田は「あら、挑戦状だと思ってるのに」と返す。石井ふく子のドキュメンタリーで何度も笑うことになるなんて、いい意味で予想を裏切られた。
そんな石井は今のドラマを見てきっぱり言うのだ。
「家族で殺し合ったり、信じらんない。そういうものは作るまいと思う。だって心の中に事件が起こんなきゃ、つまんないじゃない」
『ドキュメンタリー「解放区」』
TBS 隔週日 25:28~
https://www.tbs.co.jp/kaihou-ku/
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source : 週刊文春 2026年9月24日・10月1日号
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