東條英機は「人情派」政治家の本質を見抜け 一ノ瀬俊也

昭和史が教えるコロナ“失敗の本質”

一ノ瀬 俊也
ライフ 政治 経済 歴史

(いちのせとしや 1971年生まれ。歴史学者。埼玉大学教養学部教授。専門は日本近現代史。著書に『皇軍兵士の日常生活』『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」』『戦艦大和講義』『昭和戦争史講義』『特攻隊員の現実』『東條英機』など。)

「パンケーキおじさん」を覚えていますか。菅義偉さんが首相に就任した頃のニックネームです。

 それからもうすぐ1年。当初60%以上あった支持率は半減して30%台前半になりました。コロナ禍での五輪開催にこだわったのに、菅さんから納得できる説明はない。また、メディアを通じて国民にアピールする“自己演出”がうまくないことも、支持率低下の要因かもしれません。

 非常時は強いリーダーが求められがちです。実は、太平洋戦争開戦時の首相、東條英機はメディアを巧妙に使った指導者でした。

 東條といえば、“竹槍でB-29を落とせ”という日本軍の悪しき精神主義の象徴で、国民に無謀な戦争を強いた愚かな指導者と考えられています。ただ、当時の国民がどう見ていたのかに注目すると、意外な事実が浮かび上がります。

 1942年(昭和17)7月のある日の早朝。札幌にお忍びで現れた東條は、道端のゴミ箱から菜っ葉の切れ端をつまみ、「この葉は食えないのか」と傍らの警官に尋ねました。また民家の薪を保管する物置をのぞき、「去年の(薪)が残っているのを見れば焚きつけには不自由しないようだ」とも言ったと、当時の新聞に書かれています。

 東條にとって、これは政治活動の一環でした。軍事や経済、社会心理など総動員して「総力戦」を遂行できる国家が戦争に勝つと考えていた彼は、第一次世界大戦でドイツが敗北した決定的要因は食料不足で多数の餓死者が出たことだと分析。国家が必要な物資を計画的に配分し、経済活動を統制することで、国民を飢えさせない体制が肝心だと訴えていました。

2カ月99円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

2024GW 特大キャンペーン 誰でも月額プラン最初の2ヶ月99円 4/24(水)〜5/7(火)10:00
  • 月額プラン

    99円/最初の2カ月

    3カ月目から通常価格2,200円

    期間限定

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2021年8月12日・19日号

無料ニュースレター登録はこちら

今すぐ登録する≫

期間限定キャンペーン中!月額プラン2カ月99円

今すぐ登録する≫