子どもの頃にテレビを見ていて「吐きそうになるほど怖かった」ことがよくあった。UFOや犯罪ドキュメンタリーの番組で。最近はそういうのがめっきりなくなって寂しい思いをしていたが、『未解決事件 File.19「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」』は久々に吐き気がするほど怖かった。
この事件にまつわる「怖ろしさ」は知っていた。自らの誤謬(ごびゅう)はぜったいに認めないしそのためには人を冤罪に落としても何とも思わない検察組織、そして足利事件の冤罪でバレてしまった当時のDNA鑑定のデタラメさ、同じDNA鑑定により冤罪を訴えてた被告が死刑になった飯塚事件――犯罪に興味がある人には有名な話である。
しかし、この問題を多くの人たちにもっと知ってほしい、となった時に、テレビ番組としてどういう演出と構成にするか。その演出が研ぎ澄まされていた。

最近の『未解決事件』は正直、ぬるかったと思う。NHKだから真面目につくってるので一見「すごい!」と思っちゃうが、再現ドラマとかは無駄に扇情的だし、NHKの取材力で事件をこんなところまで掘りさげた!? ということも感じなくて、見終わって「で?」となることが続いてたが、今回のこれは「事件を細かく掘りさげる」「潤沢な予算で緻密な取材(海外までふつうに行く)」ことが今までと段違いで、手間もヒマもカネもかけていることがよくわかるのだ。結局はカネか……ということでNHKには受信料をちゃんと払おうと思わされる。
そして構成と演出。これがたぶんNHKでしかできない「淡々演出」。事実をほぼ淡々と、落ち着いた声で提示していくだけ、スタジオもないワイプもない……これが、これが怖いんだよ! 私が小学生の頃に見て吐きそうなぐらい怖かった心霊写真番組とか、こうだったんだよ! 科警研のX技官とY技官のことは頭にこびりつくよ怖いよ!
この事件にまつわる問題はもっと広がるべきものなのであるから、この番組が多くの人を恐怖に突き落としたみたいなので、構成と演出は大成功だったと思う。
ただ最後に出てきた、こいつが北関東連続幼女誘拐・殺人事件の重要参考人ではないのかという「ルパン」という男。いやまあ、防犯カメラに映った姿はいかにもあやしげで、警察検察がルパンを取り調べない理由というのも「やる気ないんか、それとも真犯人が出現して自分らの誤謬が明らかになるのがイヤなのか」って感じで演出されてたが、ここまで静かに盛り上げてきたところで「コイツが犯人だ」みたいなのを出して〆るってのがどうも、最後に余計なことしたなという気がする。こういういかにもあやしいヤツを犯人だって決めつけるのも危うい気がするんですよ……。
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source : 週刊文春 2026年10月15日号
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