10月31日に行われた衆院選は自民党が259議席を獲得し、2名を追加公認して絶対安定多数の261議席に達する勝利となりました。小誌が直前号「衆院選最終予測」で予測した数字は231議席でした。なぜ、ここまで外れてしまったのか。懺悔告白したいと思います。

 一番大きな理由は、風向きを見誤ったことです。今回の選挙は、岸田文雄首相が盛り上がった総裁選効果を狙って、解散から投票日まで最短の日程を組みました。しかし、支持率は伸びず、自民党は守りの戦いを余儀なくされていきます。さらに衝撃だったのは、衆院選投票日1週間前の静岡県の参院補欠選挙で、自民党候補が敗れたことでした。当初のリードを逆転された敗戦は、自民党への逆風を感じさせました。

 私の経験では、よほどの失言などがなければ、選挙が始まってから、流れが変わることはありません。特に公示後は、風は強くなったり、弱くなったりの「強弱」はあっても、風向き自体が変わることはありませんでした。ところが今回は、最後の1週前までは野党に吹いていた風が、最後の3日ぐらいから与党に吹き始めた。

 原因ははっきりしません。選挙を戦った候補者たちに聞いても、意見が割れていました。新聞、テレビ、小誌も含めた各メディアの最後の予測が、自民党は単独過半数割れもありえる、立憲民主党が伸びるという数字が多く出て、与党陣営が引き締まり、コアではない自民党支持者が投票に行った。各メディアが調査に使う電話や期日前投票の数字がもともと実際とかい離がある。どちらが嫌かという「拒否率」でみると、岸田首相への拒否率が枝野幸男・立憲民主党より低く、無党派層が想定より自民党に入れた。

 与党苦戦の報道が出て、「共産党と組む立憲民主党を勝たせていいのか」「衆院選は政権選択選挙だ」という与党の主張が現実味を帯び、それが最後に効いたという立憲民主党の候補者もいました。

 振り返れば予兆はありました。確かに安泰と見られていた与党候補が野党候補に迫られる激戦区は増えていました。小選挙区で敗れた甘利明・前自民党幹事長がその象徴です。しかし、つぶさに見てみれば、野党の選挙に強いと見られていた議員も与党候補に猛追されていたのです。小沢一郎、辻元清美、中村喜四郎らがそうでした。「政権交代」より「世代交代」という空気があったのです。コロナ禍で生まれた政治への不信は、反与党の風にならず、反ベテランになっていたのではないか。

 今回ほど、選挙の難しさ、奥深さを体感した衆院選はありませんでした。今回の反省を生かして、次回の予測に生かしていきたいと考えています。

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source : 週刊文春