ボリス・ジョンソン英首相の演説が波紋を呼んでいる。11月22日、産業連盟の年次総会でのことだ。

「登壇した首相はまずCOP26の成功に触れ、産業革命の地である英国が“グリーン革命”でも世界をリードすると宣言。電気自動車がさらに普及するだろうと熱弁しました」(英国紙記者)

 異変が起きたのはここから。突如、首相が「ブルルン、グォーグォー」と自動車のエンジン音の物まねをし始めたのだ。続いて、自分は英国企業が気候変動と戦うための“十戒”を手渡したと旧約聖書のモーセに例えたかと思えば、「気が引けますが」と言いながらも、ロシアの革命家・レーニンの言葉も引用。途中、手元の原稿を見失って紙をめくり続け、約21秒、会見場に沈黙した時間も流れた。

 極めつけは、子供向けアニメの豚のキャラクター「ペッパピッグ」に1分間言及し続けたこと。前日、家族でペッパピッグのテーマパークに行ってきたと語り、「行ったことがある人は挙手してください」「私の理想とする場所」だと大絶賛したのだ。あまりの事態に呆気にとられる会場。そして演説後、記者が「色々、大丈夫でしょうか?」と声を掛けると、首相は「スピーチは上手くいった」と自信満々に答えたのだった。

首相が絶賛したペッパピッグ

 演説の様子が放映されるや否や、すぐにネット上で話題に。「ペッパピッグ」はツイッター上でトレンド入りを果たした。ドミニク・ラーブ副首相は「喜びに溢れ、くまのプーさんのティガーのようだった」と独特な表現で擁護したが、首相を追及する声は止まらない。

「一つは演説が行われた総会が、反ブレグジット派が多数を占める産業界から、首相が信頼を得るために重要な場であったこと。さらに同月、首相の側近議員が関連企業に便宜を図っていたことも発覚。政権腐敗が叫ばれている最中だったこともある」(前出・記者)

 野党・自由民主党党首のエド・デイヴィー氏は「首相に不適格」などと猛批判。さらに与党・保守党議員からも、「党首として恥ずべきだ」と、官邸チームの見直しを求める声も上がる。演説後に開かれた下院では、19人の保守党議員が首相の推す予算案に反対票を投じる事態も起こった。

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source : 週刊文春 2021年12月09日