「尿一滴で、精度86%のがん検査」。東山紀之のCMでご存じの方も多いだろう。だがバイオベンチャーが開発した、線虫でがんの陽性・陰性を判定できると謳うこの検査。関係者から次々と疑義を呈する声が上がっている――。

「早期膵がんが特定できる時代がすぐそこに!」

 11月16日、ベンチャー企業・HIROTSUバイオサイエンス(以下、H社)の広津崇亮(ひろつたかあき)代表は、記者会見でこう宣言した。

広津代表

 日本人の死因の三割を占めるがん。その新たな検査手法が脚光を浴びている。

 線虫がん検査――。

 2016年に設立されたH社の広津代表によれば、線虫はがん患者の尿の匂いを好み、そちらへ向かう。一方、健常者の尿の匂いは嫌うため、線虫の動く方向で、がんのリスク判定ができるという。その線虫の習性を利用したH社の検査キット「N-NOSE」を使えば、胃がん、大腸がんなどの五大がんに加え、肝がん、前立腺がんなど、全15種類のがんが判定できる。そこに、“沈黙の臓器”とも呼ばれ、早期発見が難しい膵がんも特定できるようになるというのが先日の発表だった。実用化されれば、世界初の技術となる。

 広津代表は05年に九州大助教に就任。線虫の研究で15年に論文を発表し、翌年、H社を設立した。

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source : 週刊文春 2021年12月16日号