「ハヤシさん、江田島の図書館から講演の依頼が来ました。創立30周年で、ぜひ、ということです」
秘書の言葉に、えっと顔を上げる。
「エダジマですって!?」
コロナ以来、講演に出かけるのがすっかり億劫(おっくう)になっている私であるが、ここは絶対に行きたい。
なぜなら江田島には、旧海軍兵学校があるからだ。戦前、ここの生徒がどれほど憧れと尊敬を集めていたか、もう知る人も少ないだろう。私も知っているわけではないが、小説やドラマの「坂の上の雲」によって、その一端はうかがうことが出来た。
実は私が子どもの頃からお世話になっていた方が、ここの海軍兵学校の出身だったのである。いったん海軍に入り、戦後は東大に入学という経歴だ。聞いた話によると、海軍兵学校出身者は入学に際して優遇されたという。優秀さはお墨(すみ)つきだったからだろう。
某大企業の副社長までいったその方は、生涯海軍兵学校出身、海軍将校であったことを誇りにしていた。
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source : 週刊文春 2021年12月23日号