ミャンマーの国軍が設置した特別法廷は先週、元国家最高顧問のアウンサンスーチー氏に対し、社会不安を煽った罪などで禁固4年の実刑判決を言い渡した。10を超える罪状で起訴された彼女に対する初の判決だ。

判決には国連安保理も懸念を示した

 104年。スーチー氏が問われる各罪状で求刑される禁固刑の総年数だ。今回はその「4年分」。判決後、国軍のミンアウンフライン最高司令官は恩赦を下し、2年に減刑された。「温情」のつもりかもしれないが、まさに雀の涙。76歳になるスーチー氏率いる国民民主連盟報道官は「将軍たちは彼女を監獄で死なせようとしている」と批判した。

 ミャンマーの憲法では有罪判決が確定した人物は公職につけない。スーチー氏は現在首都ネピドーで軟禁中のままで入獄はしていない。弁護団によれば、体調は悪くはないというが、政治生命は絶たれたに等しい。

 彼女の政権運営には未熟さもあり、国軍のコントロールに失敗した政治的責任がないわけではない。それでもノーベル平和賞を受賞し、国内外で尊敬を集め、直近の選挙で圧倒的勝利を収めた国家トップに対する仕打ちは、ミャンマーへの失望をさらに深めるだけである。国軍は2年後に総選挙を行うというが、反対勢力を排除した「みせかけの民主」となる可能性が大だ。

 市民の抵抗が続く国内では、デモ隊の背後に軍車両が突っ込んで死者を出すなど国軍の苛烈な弾圧が続く。2月の政変以来、逮捕者は1万600人に上り、死者も1000人を超えた。拷問や殺害も取りざたされ、不審な焼死体も発見されている。

 国への評価もガタ落ちした。日本貿易保険の評価は現在最低の「H」。北朝鮮と同じランクだ。格付投資情報センターの評価でも、政情不安のエチオピアより低い97位。もはや投資不適格国と呼んでいいだろう。

 最大の理由はスーチー氏への起訴が示す「法の支配」の消失だ。法の支配がなければ予見可能性が失われる。長期ビジネスの展望なくして海外企業の資金投下は難しい。その点に国軍は気づいていない。

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source : 週刊文春 2021年12月23日号