所得税法違反で逮捕、起訴された日本大学の田中英寿前理事長(75)。東京地検特捜部は、難攻不落の“伏魔殿”のドンを土俵際で寄り切ったが、これで疑惑がすべて晴れた訳ではない。
司法担当記者が語る。
「当初は妻の優子氏も共犯で立件する方針でした。ただ、田中氏が自宅などから発見された1億円超について、『すべて自分の所得。妻に指示して過少に申告させた』と認めたことで優子氏の立件は見送られました」
脱税額は計2年間で約5200万円。検察側は田中氏を確実に実刑に持ち込むため、脱税額をさらに積み増すべく捜査を続けたが、不正に蓄財された資産、通称タマリを、それ以上見つけられなかった模様だ。
「田中氏の側近で、逮捕、起訴された井ノ口忠男元理事は、これまで日大出身の力士や五輪メダリストらの祝い金などと称して、取引業者からカネを集め、田中氏側に届けたとされています。今夏も、4月に日大に入学し、東京五輪柔道女子で金メダルを獲得した素根輝選手の祝勝会が、優子夫人が経営するちゃんこ屋で行なわれました。そこで、井ノ口氏らはビルメンテナンス業者などの協力で祝い金を集めていました」(同前)
こうした集金システムは氷山の一角に過ぎない。むしろ検察側は、田中氏が2008年の理事長就任以降、13年間で溜め込んだ資産を海外に移している可能性に着目していたという。地検関係者が明かす。
「一つは田中氏と近く、東京五輪にも深く関わっていた元官僚との関係です。この元官僚はオフショア口座を利用した資産管理にも通じているとされ、田中氏の資産管理にも何らかの助言を行なっていたと睨んでいたのです。そしてもう一つ、特捜部が追っていたのが、モンゴルルートでした」
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source : 週刊文春 2021年12月30日・2022年1月6日号