「今頃、あの人たちは祝杯をあげているんでしょうね……」
赤木雅子さんがつぶやいた。財務省の公文書改ざん事件で命を絶った職員、赤木俊夫さんの妻。真相を知りたいと起こした裁判が、いきなり終わってしまった。その夜のことだった。
ラブ・ストーリーは突然に、でも構わないが、裁判でそれはなしだろう。突然の終わりは12月15日。雅子さんが起こした裁判の非公開の協議で、国の代理人が唐突に告げた。
「請求を“認諾”します」
聞き慣れない法律用語だが雅子さんはピンときた。裁判を始める前の去年(2020年)1月。それまでの近畿財務局出身の弁護士に代えて今の弁護団に提訴を依頼した際、松丸正弁護士から告げられた。
「少ない賠償額で提訴すると、国にすぐに認諾されて、何もわからないうちに裁判が終わってしまいますよ」
認諾は、被告が原告の請求をそのまま認めて賠償金を払い、即座に裁判を終わらせる手続きだ。原告の望みがかなったように見える。
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source : 週刊文春 2021年12月30日・2022年1月6日号