赤いサインペンで綴られた二つの書面は、ともに癖の強い直筆の署名で締められている(文中の写真)。うり二つの四文字。一方は「同一人物の証拠」と主張し、もう一方はこれこそ「偽造の証拠」と斬り返した。一体、どういうことなのか。
2018年5月、和歌山県田辺市の資産家・野﨑幸助氏(享年77)が自宅で急性覚醒剤中毒で死亡した“紀州のドンファン事件”。21年4月、野﨑氏の3番目の結婚相手だった須藤早貴被告(25)が殺人などの容疑で逮捕されたが、その1年前、事件とは別に、泥沼の法廷闘争が始まっていた。
「発端は、怪死の2カ月後に発見された野﨑氏の自筆遺言でした」(司法記者)
そこには〈個人の全財産を田辺市にキフする〉と綴られていた。野﨑氏が遺した遺産の額は、実に約13億2000万円に上る。
「田辺市は遺産の受け取りを決め、手続きを進めていました。ところが、遺言の筆跡や内容に疑問を抱いた野﨑氏の兄ら親族4人が20年4月、『遺言書の無効確認』を求め、和歌山地裁に提訴したのです。被告は市が選任した遺言執行者の弁護士ですが、事実上、遺族と市の争い。市は有効を主張しています」(同前)
早貴がもし有罪になれば相続欠格となり、遺産は受け取れない。その場合、遺言が有効なら遺産は田辺市が総取り。無効なら市はゼロで、全額が野﨑氏の兄弟姉妹6人に分配される。
遺族側はすでに、この遺言を「別人の筆跡」とする3通の筆跡鑑定書を地裁に提出済。その大部分は筆跡の違いを指摘するものだ。 だが、視点の全く異なる“偽造疑惑”が存在していることは知られていない。
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source : 週刊文春 2021年12月30日・2022年1月6日号