週刊文春 電子版

前検事総長は“とんちんかん” 韓国大統領選で始まる争奪戦

THIS WEEK「国際」

牧野 愛博
ニュース 国際

 投開票日の3月9日まであと60日を切った、韓国大統領選が混迷を極めている。韓国ギャラップが1月7日に発表した世論調査結果によれば、与党「共に民主党」の李在明前京畿道知事が36%、最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長が26%、中道系野党「国民の党」の安哲秀代表が15%となった。尹氏の支持票が、安氏に流れ出した格好だ。

支持率が急上昇中の安哲秀氏

 尹氏の退潮を象徴するユーチューブ番組がある。経済記者らがつくる「3PROTV」。いつも再生回数は数万回程度だが、12月25日の配信分は8日現在で、340万回を超えた。話題を呼んだのは、ゲストの尹氏がとんちんかんな問答を繰り広げたからだ。

「実力がある政府なら、市場介入しても問題ない」「経済は川と同じ。有効活用するのが政府の仕事」などなど。経済の知識が、まるでないことを露呈したのだ。

 政治経験が全くない尹氏は、「検証されていない候補」として資質が危ぶまれてきた。「貧しい人には、品質が悪い食品でも食べられる選択の自由を尊重すべきだ」といった“上から目線”の発言、夫人の経歴詐称問題、野党幹部たちとの内紛が積み重なり、ここに来て一気に支持率を下げた。ただ、投開票が間近に迫っており、一部に出ている“候補者差し替え”は難しそうだ。

 では、李氏勝利で鉄板かと思えば、そうとも言い切れない。李氏はこれまでの調査で、支持率が4割を超えたことがほとんどない。与党関係者は「残り60日で、4割を超えないのは珍しい」と語る。前回大統領選で文在寅候補の得票率は41.08%だった。

 李氏も国政に携わった経験がない。さらに兄嫁への暴言音声問題や、城南市長時代の大規模開発を巡って逮捕者が出ている大庄洞疑惑などが影響している。有権者は経済回復と高騰する不動産価格問題に関心が強く、大庄洞疑惑を巡る捜査の行方次第で、いつ支持率が下がるか予断を許さない。

 となると支持率が上がってきた安氏がダークホースなのか。だが国民の党は国会(定数300)でわずか3議席しかない。与党に勝つためとはいえ、106議席の「国民の力」が、安氏への合流を認めるはずがない。

 結局、勝ちきれない李陣営と尹陣営が、最後に安氏を奪い合うという展開になりそうだ。1997年の大統領選では、第三勢力だった金鍾泌氏が選挙1カ月前に金大中氏と手を結び、金大中政権で首相に就任した。

 与党関係者はこう見る。

「これから、安哲秀により美味しい条件を提示できた陣営が、大統領選に勝利するだろう」

source : 週刊文春 2022年1月20日号

文春リークス
閉じる