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新型コロナ「インフルと同じ対応」にしたら何が起きる?

「週刊文春」編集部
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〈薬やワクチンで重症化を防げるならば、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ「5類」として扱う手はあります〉

 読売新聞(1月3日)での安倍晋三元首相の提言だ。

1月3日付読売の安倍氏インタビュー

 現在、新型コロナは指定感染症で、感染症法で上から2番目に危険な「2類相当」とされ、入院が原則だ。ただ、急拡大地域では全員入院は非現実的で政府も見直しに言及。そこで、季節性インフルエンザなどと同じで、危険度の最も低い「5類」に引き下げようというのが安倍氏の提案だ。

「『5類』切り替えは、病院や保健所の負担を減らし、経済活動を活発化させるため、重症者がいったん減ってきた2020年夏頃に一度検討されました。しかし菅義偉政権でトーンダウンした」(政治部記者)

 現状を官邸幹部が語る。

「今官邸では、議論されていません。普通のインフルエンザのように町の医者が診られるようにするというが、どう変異するかも不明なのに可能なのか。変異種ごとに指定する考え方もあるが現実的じゃない」

 インフルと同じ対応になれば、何が起こるのか。

「まず保健所が入院適応の決定をしなくなり、診察した医師が、新型コロナ患者を個別に入院すべきか否か判断するようになります」

 そう指摘するのは、太融寺町谷口医院の谷口恭院長。そこに問題点が潜むという。

「例えば当院では、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者のコロナ患者がいて、入院先を探した時、保健所が権限を発揮して入院先を何とか決めてくれました。HIVというだけで拒否する病院が多く、コロナが5類であれば、救命できなかったかもしれません。このように、『入院させなければならない患者を病院が拒否』という事態が起こりかねない。また、病床逼迫時に声の大きな開業医の要請が優先されるなど、公平性が保てなくなる」

 第2に費用の問題だ。現在、コロナの検査、治療、入院に関わるおカネは全額公費で賄われているが、これが自己負担になる。70歳未満なら3割負担だ。

「例えば発熱などの症状がある人のPCR検査は無料です。本体1万3500円の他、判断料などがかかり、5類にすると、3割でも7010円が自己負担になる。国内で初承認された飲み薬『モルヌピラビル』は10回投与で約8万円。5類になればこれも3割負担となる」(厚労省担当記者)

 金持ちだけが治療を受けられる事態になりかねない。

「費用を心配して受診せず、重症化してから病院に駆け込む人も出てきて、かえって医療者の負担が増す可能性がある」(谷口氏)

 では、5類への引き下げはいつ頃が妥当なのか。

 専門家が参考にするのが、2009年の新型インフルエンザだ。2類相当だったが、11年4月にひっそりと5類に引き下げられた。

インフルの予防接種風景

 公立陶生病院の武藤義和感染症内科主任部長が言う。

「今の第6波を乗り越え、その後で総括した時に『終わってみれば全然病床も逼迫しなかった』という状況になれば判断していいと思います。ただいきなり5類にすると『コロナは怖くない』と国がお墨付きを与えたように捉えられるので、徐々に隔離期間を短くするなど基準を緩めていきながら変更していくべきでしょう」

 岸田氏の手腕が問われる。

source : 週刊文春 2022年1月20日号

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