パーソナルカラー診断や骨格診断。最近よく聞く言葉ですよね。私が代表を務める六本木のサロンにも、日々たくさんの方が診断に来られます。特に多いのは20代ですが、2021年のJC・JK流行語大賞に「パーソナルカラー」や「骨格診断」がランクインしたことを見るに、この流行はもっと下の世代にも広がっているように感じます。パーソナルスタイリストを始めた当初は、こんな時代がくるなんて想像もしていませんでした。

 来店される方の問い合わせ内容の多くが「似合う服やヘアカラーの色を知りたい」「メイクアイテムやアクセサリー選びで迷いたくない」というもの。そういった目的の方にとっては、これらの診断は助けになる部分も大きいと思います。ただ、われわれパーソナルスタイリストがスタイリングをする際には、「キャラクター」「顔立ち」「声のトーン」「ヘアスタイル」「その方のバックグラウンド」など、様々な要素を考慮に加えます。それがあってはじめて、その人らしいスタイルになるのです。またコロナ禍で外出が減る中で、ヴィンテージやサステナブルなど、付加価値で大事な一着を選ぶ価値観も、その人のスタイルの一部に加わったように思います。

 そして実は、同じ人でも、年齢や職位、置かれている状況の変化によって、似合うものは変わっていきます。年齢の変化に限れば、若いときに比べて肌や髪のツヤが少なくなる分、本当はどんどん華やかな色や、アクセサリーを身につけるのが効果的です。昇進など立場の変化によって、顔立ちのインパクトが明らかに強くなる方もいらっしゃいます。そういうときは華やかな色が自然に似合ってきますが、さらにその時期を越えると、むしろ余裕を感じさせる落ち着いた色柄やサイズ感を選んだほうが良く見えたりもします。

 できれば、好きな服=着たい服=似合う服で幸せに生きていただきたいので、みなさんにも、一度「今の自分」を俯瞰で見てみることをおすすめします。全身鏡で頭から足の先までのスタイリングをチェックしてほしいのですが、ここでもう一工夫。鏡だと、どうしても主観で見てしまうので、できれば鏡の中の自分の全身写真を撮影してみてください。

 私のお客様のなかに、3か月の間、毎日お出かけ前に全身写真を撮り続けた方がいらっしゃいました。3か月分の写真を並べてみたら、一目瞭然! 後半になるに従って、サイズ感や上下のボリュームや自分に合う地味派手のバランス、靴とバッグの合わせ方などが、どんどん上手くなっているのです。

 電車や通りすがりで見かけた人の装いに、「こうしたらいいのに」と密かに思ったことは、みなさん、あるのではないでしょうか。自分のことだって、こうしてワンクッション置いて「定点観測」すれば見えてきます。自分を客観的に見ることができて、ダメ出しができれば、変だな、と思った組み合わせは2度とすることはありません。見る目が成長していき、「似合う」に近づいていくと思います。

 似合う服を着ると、ただスタイルがよく見えたり、肌ツヤがよく見えたりするだけではありません。人の視線を感じて自信がつき、姿勢や表情まで良くなって、人にも優しくなれちゃったり……。そうすると、人間関係や運命まで変わってきそうだとは思いませんか? 似合う服がもたらす効果はこれほど絶大なのです。

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source : 週刊文春 2022年2月17日号