スタートした時は、こんな大きな事件になるとは思いませんでした。今週の右トップ「経済安保のキーマン 朝日記者不倫と“闇営業”」の記事のことです。高級官僚がビジネススクールで副業をしながら、その報酬を申告していない、というのが当初の情報でした。その官僚とは、経済安全保障法案を取りまとめる責任者の藤井敏彦・経済安保法制準備室室長。

 毎週土曜日に、幹部候補を養成するビジネススクール・不識塾で講義していると聞き、記者が一人で張り込んでみると、あっさり姿を見せました。翌週の土曜日、今度は本格的な取材チームを組みました。すると、再び藤井氏は姿を見せます。オミクロン株が猛威を奮う中、今国会の目玉法案の責任者が、毎週通う。これだけでも、彼の“本気度”が伝わってきます。

 しかし、藤井氏はここから驚くべき行動に出るのです。向かったのは、月島。入っていったのはマンションでした。彼の自宅は、世田谷にあります。いったい、何をしているのか。

 彼の姿が見えたのは23時40分。約6時間をマンションで過ごしました。ただ、彼が誰と会っているのか、まではわかりませんでした。ここで、奇跡が起きます。何か忘れ物をしたのか、ロビーに人影が見え、彼と接触したのです。それは女性でした。“闇営業”に加えて、不倫の疑いも出てきました。

 ただ、断定はできません。たとえば、妹などの親戚かもしれません。今度は女性を特定するべく、張り込みを始めました。そして、金曜日、女性に動きがありました。

 朝6時前から黒塗りのハイヤーが待機。8時過ぎになると女性が出てきて、慣れた様子でハイヤーに乗り込みます。羽田空港に向かい、滞在すること30分。月島に戻ると、大通りでハイヤーを降り、スーパーへ買い物に。刺身を購入します。張り込みチームは、ここで「今晩、男は来る」と予感したそうです。刺身の量から見て、自分ひとり用とは思えない。さらに、生ものである刺身は今日中に食べるはず。そして、薬局で歯ブラシを2本、男性用のT字カミソリを買ったのを見て、予感は確信に変わりました。

 夜8時、藤井氏が現れました。そして、朝まで――。翌朝10時、迎車タクシーに飛び乗ると、向かったのは不識塾。3週連続の土曜出勤です。

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source : 週刊文春